2014年06月18日 00:00 〜 00:00
幌延取材団(6/18~19)

会見メモ

取材日程:

【6月18日(水)】

野々村仁・幌延町議会議長会見/宮本明・幌延町長会見/清水和彦・日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター所長会見/久世薫嗣・核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会代表委員ほか会見

【6月19日(木)】

幌延深地層研究センター見学(地下350メートル調査坑道など)


会見リポート

オンカロから北海道へ

事の始まりは昨年1月の北欧フィンランド取材団だった。世界で最も計画が進む核のごみ処分試験施設「オンカロ」を訪問した。参加者から「次は日本の施設」という声も上がり、北海道・幌延町にある日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターを訪ねる今回の取材団につながった。


東京から空路で稚内空港に入りバスで小1時間、思った以上に近くに感じたが、季節によっては天候不良で欠航も多い。道路わきにはバスの天井よりもずっと高い位置に矢印の標示板が見えた。冬に雪で埋もれるので場所を分かるようにするためだ。厳しい自然をうかがわせた。


今夏に高レベル放射性廃棄物の模擬体を使った本格試験を始める地下350メートルの縦穴に入った。作業用エレベーターで下りること4分。水平方向に広がる坑道にたどり着いた。18億年前にできあがった分厚い岩盤で囲まれたオンカロと違って、幌延の地層は2・5万年ぐらいと若い。オンカロでは見られないような地下水の湧き水もあちこちで見られた。地震や火山の日本では、こうした条件の地下に埋めざるを得ないことをあらためて実感した。


幌延町は原子力機構や北海道と協定を結び、放射性廃棄物は持ち込まないと申し合わせている。住民には「なし崩しに処分地になるのでは」といった警戒もあるが、宮本明・町長や野々村仁・町議会議長は会見で、協定を挙げて「最終処分場になることはない」と繰り返した。


一方、研究活動は長く続けてほしいという町の事情も伝わってきた。当初計画で研究は2020年代に終わる予定だが、廃棄物を途中で取り出す方式や直接処分など新たな研究も課題になっている。町には年間1億6千万円の電源立地地域対策交付税が国から支給され、雇用面などメリットも大きい。新たな研究に対して宮本町長は「協定の範囲内なら前向きに協議したい」と話した。


団長・企画委員 朝日新聞大阪本社編集委員 服部 尚


<取材団に参加して>


●「最後は金目」なのか


北海道幌延町と鹿児島県。縁もゆかりもないと思い込んでいた日本列島両端の地は、「核」をキーワードに眺めるとつながっていた。当地の川内原発に留め置かれた使用済み燃料の行く末が地下深くとなれば、かの地の施設は身近に思えた。


使用済み燃料の再処理とプルトニウム利用を繰り返す核燃料サイクルは、とうに破綻したとみる。ただ、サイクルのいかんにかかわらず、核のごみの処分は避けて通れない。


幌延では、「20年程度」とされる深地層研究センターの運用期間延長が耳目を集めていた。実用施設へ、となし崩しの懸念があるのだろう。


時を同じく、福島の汚染土保管の中間貯蔵施設計画をめぐり、石原伸晃環境相の「最後は金目」発言が批判を浴びた。地層処分に無縁とは言い切れない。そう実感させられる取材だった。


南日本新聞報道部 永瀬 和哉


●北の端に、関心寄せて


幌延へは札幌から特急で4時間かかる。同じ北海道でも幌延は遠い。


そんな幌延を、遠く鹿児島をはじめ全国の記者仲間が訪ねてくれた。地元紙の記者として励みになった。


「なぜ、こんな北の端に核のごみの問題が押しつけられたのか」「なし崩しで処分場になる懸念はないのか」。現地の会見で出た数々の質問は、日頃から北海道民が問い続けていることでもある。


北海道大学が昨秋行った調査で、幌延に核のごみの研究施設があることについて、札幌市民は「よく知っていた」「少し知っていた」が合わせて半数を超えたのに対し、首都圏住民は「まったく知らなかった」が7割を超えた。「あまり知らなかった」を加えれば9割以上になる。


今回の取材ツアーが、幌延に全国の関心が集まる契機になればと思う。


北海道新聞報道センター 関口 裕士


ゲスト / Guest

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