2014年04月04日 18:00 〜 19:50 10階ホール
試写会「中国 日本 わたしの国」

申し込み締め切り

会見リポート

たくましき懸け橋を見よ

倉重 篤郎 (毎日新聞専門編集委員)

試写会の魅力は、時によって、製作者の事前説明があることだ。


ちと瀬千比呂監督のプレゼンは要を得て簡潔、だけど、「へー?」と関心をそそるものがあった。


いわく。「主人公は父が中国人、母が日本人の中国残留邦人二世の女性です。日本に来て亀有駅前でタクシー運転手をしており、たまたま私の知り合いのプロデューサーが、このタクシーに1時間乗ることがあった。その時に彼女が運転しながら語り出した半生が、とても面白かったのです」


それが製作の動機だった。それから4年間、監督は女性を追っかけたが、その間、監督には個人的に悩むことがあり、「彼女から随分と力を与えられました」と言う。「(彼女という)素材をどう生かすか。それだけを考えて作りました」


確かに、見終わった者の感想として、監督の気持ちが伝わった。二世ゆえの子ども時代のいじめ・ひきこもり、文化大革命時代の隔離審査体験、工場での労働、起業家としての才能発揮、1972年の国交回復、母の祖国への郷愁、来日。タクシー運転手業。その間、中国人の夫2人、日本人の夫1人と離婚し、3男1女をもうけた。日中の複雑な現代史を生き抜いてきた女性のたくましさは、何か周辺をして見習わねば、という迫力を持っていた。また、ドキュメンタリー映画として、極力素材そのままの味を生かし、素材をして語らしめる手法が奏功している。


映画の中で彼女は、今後は、観光業的な日中の懸け橋になるような仕事がしたい、と語る。このご時勢である。こんな懸け橋があることを知っただけでもほっとする。


試写会には問題もある。劇場公開までに間があることだ。6月(東京・ユーロスペース)までお待ちを。


(C)2013 パル企画


ゲスト / Guest

  • 試写会「中国 日本 わたしの国」

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ