2014年02月17日 14:00 〜 15:30 10階ホール 
著者と語る『誕生日を知らない女の子 虐待―その後の子どもたち』黒川祥子氏

会見メモ

凄まじい虐待を受けた子どもたちを取材した著書『誕生日を知らない女の子 虐待―その後の子ども』で第11回開高健ノンフィクション賞を受賞したフリーライターの黒川祥子さんが会見した。執筆時の苦労や虐待が子どもたちから奪うものについて話し、質問に答えた。

司会 杉尾秀哉 日本記者クラブ企画委員(TBSテレビ)


会見リポート

虐待された子どもたちの「心の叫び」を

鵜飼 哲夫 (読売新聞編集委員)

児童虐待の報道のたびに親の残虐さがクローズアップされる。では、虐待された子どもは、施設などで保護されれば問題は解決するのか?


『誕生日を知らない女の子』(集英社)は、親から叩かれ、性的虐待され、無視される世界しか知らない子どもが負った傷の深さを克明に伝え、読む者をたじろがせる。痛み、苦しみから自らを防御するため感情を遮断する子、実親の「お前なんか死んでしまえ」という幻聴にうなされる子…。幼くて愛を知らず、世界から居場所を失った子どもの喪失感はあまりにも深く、やむにやまれず攻撃的行動を起こすケースもある。しかし、それは地域や学校の無理解で、「暴力的な子」と烙印を押され、ますます孤立する子もいる。会見では、里親になり、懸命に子どもを支える人たちがいることへの希望と同時に、養護施設などの現状と課題、虐待児が成長して子を産み、虐待の連鎖が起きている問題も報告された。


「親の愛」という美名では問題の解決はない。親もまた貧困、無縁社会の進行で孤立しているからだ。「社会全体で子どもをだっこしてあげたい」と作家は語る。ただし、甘い了見では、傷ついた子は助けられない。本書を読み、彼らの心の叫びを知ることを勧めたい。


ゲスト / Guest

  • 黒川祥子 / Shoko Kurokawa

    日本 / Japan

    フリーライター / Writer

研究テーマ:著者と語る『誕生日を知らない女の子 虐待―その後の子どもたち』

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