会見リポート
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サウジ初の女性監督 未来への希望軽やかに
土谷 英夫 (日本経済新聞出身)
これは事件だ。
聖地メッカを抱える保守的なイスラム王国サウジアラビアには映画館がない。法で禁じているからだ。そのサウジで、同国初の女性監督ハイファ・アル=マンスールが、10歳の少女ワイダを主人公とする映画を撮り、母国の女性差別の因習を正面から告発した。
男の子のように自転車に乗りたくても、女の子にふさわしくないと、買ってもらえない少女。女性が自動車の運転を禁じられているので、生活の足を外国からの出稼ぎ運転手に頼るしかない母親。男児が欲しくて第二夫人をめとる父親。男性の名前しかない家系図に、自分の名を書いた紙片をそっと貼るワイダ。
全編サウジ国内でのロケ。地区によっては撮影を許さない保守的な住民もいる。監督がバンから無線で演出したこともあったという。
とはいえ、政治的な堅苦しい映画では決してない。自転車購入資金にと懸賞金目当てに学校でのコーラン暗唱コンテストに挑む主人公を演じた少女の瑞々しい演技をはじめ、見ていて楽しい映画に仕上がった。
ヴェネチア映画祭はじめ、いくつもの国際賞を受けたのも、うなずける出来栄えだ。
映画館がないサウジだが、この作品がDVD化されれば、各家庭で見られる。脚本が検閲を通っているので自宅鑑賞が禁じられることはあるまい。映画でも少女と父親が、居間の薄型テレビでTVゲームに興じる場面が出てくるが、この映画を見たサウジの家庭で、どんな家族の会話が交わされるのか興味深い。
女性監督が投じた一石の波紋は、意外や大きなうねりになるかもしれない。
ゲスト / Guest
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試写会「少女は自転車にのって」