2013年09月24日 12:00 〜 13:30 10階ホール
昼食会 カハノフ 駐日イスラエル大使

会見メモ

イスラエルのルツ・カハノフ新駐日大使が会見し、日本との関係では、ハイテク立国の両国が、経済、科学技術分野の関係を強化していくのを期待していると述べた。周辺国情勢についての質問には、内政干渉ととられたり、議論に引きずれ込まれたりしないように、イスラエル政府は、“戦略的沈黙”政策を堅持している、とも。

司会 日本記者クラブ理事 伊藤芳明(毎日新聞)

代表質問 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

「戦略的沈黙」と「ソフトな語り口」

嶋田 昭浩 (東京新聞外報部)

9月に信任状を提出したカハノフ駐日大使の会見での言葉を耳にしながら、中東特派員時代に家族ぐるみで付き合ったエルサレム近郊に住むユダヤ人夫婦の言葉を思い出した。「イスラエルはサボテンのような国」。2人は、半ば自嘲気味に、半ば誇らしげに、そう話していた。


自国の安全保障を脅かすとみなすパレスチナ人との間には壁を築き、攻撃を仕掛けてくるイスラム勢力にも容赦はしないが、イスラエル社会の内側は居心地がいいという。クネセトと呼ばれる国会にアラブ系議員もいる「徹底した民主主義」が、彼らの自慢でもあった。


「決して紛争だけの国ではないのです」と語る大使は、外から見れば鋭いとげを突き出したサボテンのようなイスラエルのイメージを変えることこそ自分の役割、と心得ている。


外務省に勤め始めてちょうど30年、東アジア・太平洋地域一筋に担当してきた経験から「日本は自分にとって目新しい国ではない」と話し、「乏しい天然資源」「勤勉さ」「教育熱心」「集団での取り組み」など、日本とイスラエルに共通するという側面をずらりと並べた。


隣国シリアの内戦をめぐる質問には「介入したくない。どの勢力を好むかということも明かしたくない」と回答。パレスチナに対しても攻撃的な言葉を一切口にしない女性初の駐日イスラエル大使に、報道陣から「ソフトな語り口」を称揚する声が聞かれた。


大使自身、自国政府の姿勢を「戦略的沈黙」と表現した。周囲の混乱に「引きずり込まれたくない」という思いが沈黙につながる。


ただ、被爆国・日本の記者としては、大使が警戒するイランの核開発問題と同時に、イスラエル自らの核保有疑惑についても、今後、戦略的沈黙でなく踏み込んだ説明を期待したい。


ゲスト / Guest

  • ルツ・カハノフ / Ruth Kahanoff

    イスラエル / Israel

    駐日大使 / Ambassador to Japan

ページのTOPへ