2013年09月05日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
研究会「エジプト情勢 これからどうなる」 ヒシャーム・エルズィメーティ 駐日エジプト大使

会見メモ

エルズィメーティ大使が、モルシ前政権の評価と暫定政権が発表した「民主化へのロードマップ」について、写真や動画を交えて説明した。今回の民衆蜂起はエジプトのアイデンティティをめぐるものであり、前政権では他党間との合意や公約などが何1つ実現しなかった、と語った。

司会 日本記者クラブ 脇祐三(日経新聞)

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

民主化と国民の和解が急務

二村 伸 (NHK解説主幹)

「エジプトで何が起きているのか説明したい」という大使自らの希望で会見が行われた。モルシ大統領が就任からわずか1年でその座を追われた理由について、大使は「約束を何ひとつ実行しなかったからだ」と述べ、「エジプトは崩壊の危機にひんし、内戦に陥ろうとしていた」として軍の介入を正当化した。


「イスラム穏健派が政権に就けば、強硬派や過激派をコントロールできると一部の人は思ったが、それは誤りだった」。大使はムスリム同胞団が権力を独占し、「女性やコプト教徒の権利をないがしろにした」「テロリストに恩赦を与え厚遇した」「スエズ運河を外国に貸与しようとした」などとモルシ政権を徹底的に批判、様々な映像や写真を使って同胞団による残虐な行為を非難した。


一方で選挙には同胞団のメンバーであっても「手が血で染まっていない者は誰でも参加できる」と述べ、非民主的だとの批判をかわした。


大使は政変の背景と現状、今後について暫定政府の立場を連日各方面に説明して回っている。ただ、国際社会の目は厳しい。「国の安定と治安の回復に取り組む」と大使が述べたように、エジプトが信頼を取り戻すためには民主化のロードマップを誠実に実行し、「民主化」と国民の和解を実現させる以外にない。


同胞団に対する国民の失望は大きく反発も強いが、一方で支持する国民も少なくない。エジプトの対立は「寛容なエジプトを維持したい勢力と、神権化を求める勢力のアイデンティティーをめぐる争い」と大使は表現した。


では混乱をどうやって収束させるか、その答えは誰も持ち合わせていない。大使が言うように軍の介入以外に手段はなかったのか、また、エジプトは生まれ変わったか。1年後にあらためて大使の話を聞きたいと思う。


ゲスト / Guest

  • ヒシャーム・エルズィメーティ / Hisham El-Zimaity

    エジプト / Egypt

    駐日エジプト大使 / Ambassador to Japan

研究テーマ:エジプト情勢 これからどうなる

研究会回数:3

ページのTOPへ