2013年09月04日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
シリーズ企画「3.11大震災」福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員 開沼博

会見メモ

脱原発論の熱狂は本物だったのか。『「フクシマ」論―原子力ムラはなぜ生まれたのか』『漂白される社会』などの著者で、震災後からクラブで毎年会見している開沼博氏が、原発事故を日本社会がどのようにとらえてきたかについて分析した。

司会 日本記者クラブ企画委員 倉重篤郎(毎日新聞)


会見リポート

3・11から2年半 いま考えるべきことは

杜 雲翼 (日本テレビ報道局社会部)

あの大震災と原発事故から2年半の間、福島を見続けてきた、社会学者・開沼博氏による日本記者クラブでの3回目の会見は、正確で適切な「問題」を設定することと、分かっている/分かっていないことを峻別して議論する大切さの指摘から始まった。


開沼氏は、「いま、被災地が抱える問題は、決してその全てが大震災・原発事故由来ではない」と言う。放射能や津波の被害を別にして、被災地が抱える問題(少子高齢化、過疎化、コミュニティーの崩壊、インフラの老朽化…)のほとんどは、日本が成熟・爛熟していくなかで発生した問題であり、それは3・11の前から、ゆっくりと、しかし確実に進んできた問題なのだ。


大震災と原発事故によって、問題はより加速され、より可視化された形で、私たちに突きつけられている。今後の日本で起こるであろう問題の萌芽が、いま、「被災地」に先鋭的に現れている、との指摘は、まさにその通りだと思う。


また大震災と原発事故は、科学的・公的なものに対する、一般民衆の「信頼」を失わせてしまっている現実がある、との指摘もあった。近代社会は、目に見えない「信頼」の連鎖の中で、飛躍的な発展を遂げてきた。しかし3・11以後、そうした「信頼」が失われ、不安と不信への依存が強まっている。その解決策として、開沼氏は「科学的合理性の徹底」と「科学的合理性を超えた存在を包摂する社会の形成」の2点を挙げていたが、私も具体的に考え続けていきたい。


いま、必要なことは、被災地への長期的な支援と、被災者それぞれの思いをくみ取り、それぞれのニーズに細かく対応していくことだと切に思う。


私も開沼氏と同じく、1984年生まれ。「ステレオタイプな報道になっていないか」を絶えず自問自答し、「いま、本当に伝えるべきことは何か」を考え続けていきたい。


ゲスト / Guest

  • 開沼博 / Hiroshi Kainuma

    日本 / Japan

    福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員 / Junior Researcher, Fukushima University

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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