2013年08月20日 13:30 〜 15:00 宴会場(9階)
研究会「参院選後の日本」 ④伊藤元重 東京大学大学院教授

会見メモ

日本経済再生のために、安倍政権がとるべき経済政策について、政府の経済財政諮問会議で民間議員をつとめている伊藤元重・東京大学大学院教授が話した。民間企業が活動しやすいようにマクロ経済環境を整備して、成長戦略をつくっていくことが大事とした。

司会 日本記者クラブ企画委員 実哲也(日本経済新聞)

経済財政諮問会議のウェブサイト

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/index.html


会見リポート

ルビコン川を渡った日本経済

安井 孝之 (朝日新聞編集委員)

時代を切り開くのは楽観論者である。〈自分には力がある〉〈リスクはあるがやり通せる〉。そう考えられないようではチャレンジできない。


「日本経済はルビコン川を渡った」と話し、揮ごうもした伊藤元重教授。デフレ脱却に向けて超金融緩和に踏み出したのだから、もう振り返ったり、心配したりしても仕方がない。前に進むしかない。そんな思いが伝わる会見だった。教授もまた楽観論者であると見た。


安倍政権の下で復活した経済財政諮問会議の民間議員になっただけに、アベノミクスをサポートする立場。白川日銀のかじ取りをやんわり否定し、超金融緩和へとかじを切った黒田日銀の金融政策を「想像以上に効果があった」と評価した。超金融緩和からの出口戦略の難しさを多くの識者やメディアが指摘するが、「出口戦略は難しい話ではない。批判は的外れ」と言い切った。


そうは言われても心配になるのが人情である。デフレから抜け出してもいないのにインフレを心配するのもどうかとは思うが、賃金上昇が物価上昇に追い付かなくなり、超金融緩和の副作用に苦しむことはないのだろうか。「過去をみると一般的には物価と賃金とは連動する」と賃金上昇が少し遅れるとはいえ、追随すると楽観的な見方を披露した。


むしろ問題は長期にわたるデフレの下で「何もしないことが得策」と思い込んでしまった経営者たちが、アニマルスピリットを復活させ、積極的な投資行動に出てくるかどうかであると指摘した。電力改革やTPP(環太平洋経済連携協定)などビジネスチャンスが広がると見た民間企業が動き出すかが「第3の矢」の成長戦略の肝である。


積極果敢な投資行動が見え始めれば、教授の楽観論も説得力が増す。ルビコン川を渡った限りは、そうあってほしいと願うばかりである。


ゲスト / Guest

  • 伊藤元重 / Motoshige Itoh

    日本 / Japan

    東京大学大学院教授 / Professor, Graduate School of Economics, University of Tokyo

研究テーマ:参院選後の日本

研究会回数:4

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