2013年07月24日 13:00 〜 14:00
囲む会 「富士山学」渡辺豊博 都留文科大学教授 

会見メモ

渡辺豊博・都留文科大学教授(NPOグラウンドワーク三島専務理事)が、「富士山が壊れる―富士山の世界文化遺産登録後の光と影―」と題して、話した。

司会 日本記者クラブ企画委員 瀬口晴義(東京新聞)


会見リポート

「富士山が壊れる」世界基準で守りたい

柳沢 伊佐男 (NHK解説委員)

裾野に点在するゴルフ場、草むらに捨てられた空き缶の固まり、山小屋から流れ出たし尿の跡…。映し出された画像を前に、渡辺教授は「これも富士山の実態」と訴えた。富士山の環境保全や世界遺産の登録運動で活躍した経験を買われ、大学で「富士山学」を教える渡辺氏。「世界遺産の登録で富士山が壊れてしまうのではないか」と危機感を募らせている。


富士山が「壊れる」理由はさまざま。▽登山者の激増と事故の多発化▽弾丸登山や無謀登山の増加▽その場しのぎで後手の行政の対策▽静岡県と山梨県の思惑・利害の相違などと、厳しい指摘が相次ぐ。


「課題が何ひとつ解決していない」という現状を踏まえ、富士山を再生させるための「処方箋」を提案する。▽「富士山庁」の設置による一元管理▽環境保全法としての「富士山法」の制定▽富士山基金の創設など。一番の問題は、富士山を管理する体制が一本化していない点だと力説する。文化遺産としては文化庁、国立公園では環境省、その他国土交通省、林野庁、地元の静岡県、山梨県…。「縦割り行政」の縮図のような保全管理の体制は、「欧米の世界遺産(国立公園)では考えられない」とした上で、責任の所在を明確にし、一元管理をする機関を国が設置すべきと主張する。そこには「役人」だけでなく、専門家やNPO法人のメンバーも加えるべきと考えている。


なぜそこまで富士山にこだわるのか。「富士山を変えれば、日本を変えられるから」だと説明する。富士山の官僚主義的・中央集権的な管理の在り方を改め、新しい仕組みをつくるのは、日本の国家システムを変えることと同じという。


世界遺産登録の祝賀ムードが漂う中、あえて厳しい発言をするのは、富士山を愛してやまないからか。「世界基準」で富士山を守りたいという渡辺氏の今後の活動に注目したい。


ゲスト / Guest

  • 渡辺豊博 / Toyohiro Watanabe

    日本 / Japan

    都留文科大学教授(NPOグラウンドワーク三島専務理事) / Professor, Tsuru University, Director and Chief Exective Groundwork Mishima

研究テーマ:富士山学

ページのTOPへ