2013年07月09日 13:30 〜 14:30 宴会場(9階)
川勝平太 静岡県知事 記者会見

会見メモ

川勝知事は日本人の自然観や文化観が現れているので、今回の世界文化遺産登録は大変意義深いと喜びを語った。山梨県とは登録に向け4年前から歩調を合わせてきており、両県で協力しながら“富士の山”という共通の宝を守って行きたいと。懸念される入山者数増加については、今は観察する期間であり、適正な入山者数の規模を見極めていきたいとも。

司会 日本記者クラブ委員 川戸惠子(TBSテレビ)


会見リポート

世界遺産登録を弾みに ふじのくにづくり

川内 十郎 (静岡新聞東京支社編集部長)

大差で再選を果たした直後に富士山の世界文化遺産登録が決定、しかもイコモス(国際記念物遺跡会議)が構成資産から外すように勧告した三保松原も一転、登録された。会見で川勝知事は言葉の端々に高揚感をのぞかせながら、富士山が発するメッセージを基本に据えた「ふじのくに」づくりの持論を展開した。


学者知事〟の得意分野だけに、持ち前のパフォーマーぶりがひときわ、さえた。


自然の産物である富士山が、なぜ文化遺産か。知事は人工物を文化ととらえる西洋的な考えとは違い、自然の中に最高のモデルを見いだす日本独自の価値観が根底にあるとした。登録の意義を「日本の持つ自然観や文化観が、世界に公認された」と強調した。富士山が古来から信仰や芸術の対象になっている例を挙げ、万葉歌人の山部赤人が詠んだ長歌「天地の 分かれし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 富士の高嶺を…」をよどみなく、そらんじてみせた。


各国の代表から後押しの声が相次いだユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会を振り返り、「日本と富士山が愛されていると感じ、本当に感動した」と声を詰まらせる一幕もあった。


知事は就任時から、ふじのくにづくりを掲げ、「富士山の日」(2月23日)を制定した。施策を富士山と関連づけて啓蒙、推進しようとしている。富士が「不二」「不死」とも表記されることからオンリーワンや健康長寿を目指したり、自然への畏敬の念で危機管理意識を高める─などだ。来年には「国民の会」を組織し、全国区でふじのくにづくりを進めるという。


だが、現状の富士山は登山者のし尿処理など問題が山積し、登録でより深刻化する可能性がある。知事が会見で指摘したように、静岡、山梨両県の県民レベルでの富士山への向き合い方には隔たりが大きい。スタートラインとの認識が強く求められる。


ゲスト / Guest

  • 川勝平太 / Heita Kawakatsu

    日本 / Japan

    静岡県知事 / Governor of Shizuoka Pref.

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