2013年06月27日 11:00 〜 12:30 10階ホール
田中浩一郎 日本エネルギー経済研究所中東研究センター長

会見メモ

日本エネルギー経済研究所の田中浩一郎・中東研究センター長が、イラン大統領選挙の結果を総括し、新政権の課題などについて話した。穏健派のロウハニ師が1回目の投票で過半数を得るとは自分も想定していなかった。中道右派と改革派の連携がうまくいき、経済制裁の中、閉塞感を打破したい有権者を引き寄せたのが勝因だ、とした。ただし、ギリギリ過半数の大統領で、国内に保守強硬派を抱える中、核問題などでの姿勢は変わらないだろう、と。最高指導者ハメネイ師にとっては、誰が勝っても容認できる範囲内だったと思われる。ただし、同師に近い保守派2候補の票が延びなったのは、一番大きな誤算だったのでは、とも。

司会 日本記者クラブ委員 杉田弘毅(共同通信)

日本エネルギー経済研究所HPの田中氏の「中東レポート」

http://eneken.ieej.or.jp/journal/middle_east_report.html


会見リポート

イラン大統領選 圧勝ロウハニ師が直面する課題

櫻山 崇 (共同通信社外信部)

世界の注目を集めた6月14日のイラン大統領選は、優勢とされた保守強硬派の候補ではなく、穏健な路線を掲げるロウハニ師が圧勝した。

核兵器開発疑惑を理由に経済制裁を科し、武力行使をちらつかせる米国に対し、イランは強硬姿勢で対抗してきた。原油輸送の大動脈ホルムズ海峡を封鎖すると警告し、米国と関係の深いイスラエルを射程に収めるミサイルを試射して、報復能力を誇示してきた。米欧との対話を訴えるロウハニ師の登場で、国内外で緊張緩和の期待が高まっているが、ことはそう簡単ではない。

田中氏は、次期大統領が直面する外交課題を難易度別に分類した。米欧との対話チャンネルの再構築は、イランに対する経済制裁を恒常的に強化しようとする米国の存在もあり「D」。肝心の核交渉進展と経済制裁の緩和については、一段と厳しい「G」とした。

理由の1つは、核問題で妥協を嫌う国内勢力の存在だ。田中氏は「これだけ強い保守強硬派をいかにとりまとめるのか。誰を交渉担当者にすれば国内をまとめることができるのか。ここが全く見えない」と話す。

外部要因も複雑だ。ロウハニ師は記者会見で、核開発の透明性を高める用意を強調。交渉を通じた経済制裁の緩和と、ウラン濃縮の権利の確認を目指すとみられるが、イランと主要交渉相手の米欧との間では、最低限の信頼が欠如する。過去の交渉ではお互い、小さな譲歩で最大限の利益を得ようとして、議論がかみ合ってこなかった。

その間にもイランの核開発は拡大の一途をたどり、軍事攻撃も辞さない米国やイスラエルの出方に注目が集まる。田中氏は「兵器級プルトニウムを取り出しやすい研究用重水炉が来年稼働する。米国は、2014年を越えてこの活動が続くことは容認できないだろう」と懸念した。

ゲスト / Guest

  • 田中浩一郎 / Koichiro Tanaka

    日本 / イラン

    日本エネルギー経済研究所中東研究センター長 / Managing Director, Director of JIME Center, The Institute of Energy Economics, Japan

研究テーマ:イラン

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