2013年06月07日 10:30 〜 11:45 10階ホール
TPPと米国 ブルース・ストークス ピュー・リサーチ・センター (米世論調査団体)国際経済世論調査部門ディレクター

会見メモ

ピュー・リサーチ・センター(米世論調査団体)の国際経済世論調査部門ディレクターのブルース・ストーク氏が、同社の最近の世論調査をもとに、米国民の貿易、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、対日・対中観などについて話した。米国民にとって最大の関心は国内経済であり、TPPはあまり話題になっていないという。しかし、日本がTPP参加を表明したことは歴史的な意味合いがある、という。「TPPは日米2国間のFTAでもある。経済的な側面だけでなく、日米同盟の将来にかかわる問題でもある。中国から投げかけられる挑戦を日米でどう対峙していくのか、戦略的な交渉にもなるだろう」と語った。

司会 村田泰夫 日本記者クラブ企画委員

通訳 澄田美都子(サイマル・インターナショナル)

ピュー・リサーチ・センターのウェブサイト

http://www.pewresearch.org/


会見リポート

日米で異なるTPPへの感覚・見方

村田 泰夫 (企画委員 朝日新聞出身)

「TPP(環太平洋経済連携協定)は米国より日本に有利に働く」「日米が対等な立場で結ぶ初めての貿易協定になる」「日本では大騒ぎだが、米国では話題にもなっていない」──TPPについて米国人は、われわれ日本人の多くが抱く感覚と大きく異なる見方をしていることを、豊富なデータで示してくれた。

ストークスさんは、根っからのジャーナリスト。18年前に日本記者クラブで開かれた「米国人ジャーナリストを囲む会」に来ていただいたこともある。現在は、公共政策専門誌である『ナショナル・ジャーナル』に定期的に寄稿しているほか、世論調査団体であるピュー・リサーチ・センターの国際経済世論調査部門のディレクターを務める。

TPPについて、ストークスさんは実質的に「日米2国間のFTA(自由貿易協定)である」と語った。日本と米国は、EU(欧州連合)ともFTAを結ぶ交渉を始めている。「米国、日本、EUの3極がレベルの高い自由貿易のスタンダードを決める意義は大きい。そこに他国を参加させることで世界貿易を拡大させることができる」というわけだ。

中国がTPPに強い関心を示していることについては、「TPPは世界の新しい貿易ルールを決めることになるが、そこに透明性に欠け、説明責任を果たさない中国式のルールを持ち込ませるわけにはいかない」として、中国抜きで結ぶ意義を語った。中国のTPP参加については「中国が経済体制を劇的に改革できるとは思わないので、現実的ではない。オバマ政権も参加できると考えていない」と述べた。

また、TPPは日米間の狭い経済問題ではなく戦略的協定である、と強調したのが印象に残った。「21世紀の日米同盟の未来を左右するものであり、中国の挑戦にいかに対処していくか歴史的な意味があり、失敗は許されない」と言うのだ。

ゲスト / Guest

  • ブルース・ストークス / Bruce Stokes

    米国 / USA

    ピュー・リサーチ・センター (米世論調査団体)国際経済世論調査部門ディレクター / Director, Pew Global Economic Attitudes Pew Research Center

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