2013年06月04日 14:00 〜 15:00 宴会場(9階)
伊藤穰一 マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長 記者会見

会見メモ

ネットやデジタルの最先端技術を研究しているマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの伊藤穰一所長が、情報環境の変化が社会に与える影響などについて話した。従来は、まず資金を集め、その後に製造という過程で製品は開発されてきた。しかし、インターネットの出現で通信やコミュニケーションのコストが低下した。GoogleやYahooなどは、資金ゼロで学生たちがつくりあげ、その後にビジネスモデルができたように、イノベーションコストが激減していることなどを解説した。

司会 日本記者クラブ企画委員 杉尾秀哉(TBSテレビ)

MITメディアラボのウェブサイト

http://www.media.mit.edu/


会見リポート

生き残れ! 世の中のためにマスメディアは必要

川本 裕司 (朝日新聞編集委員)

米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長に就任したのが2年前。昨年にはニューヨーク・タイムズ(NYT)の社外取締役に選ばれた。インターネットのベンチャー企業を興したほか、著作権改革を進める非営利団体トップを務めるなど多分野で活躍してきた。

ベンチャー投資会社経営者の経験をもとに「通信やソフト流通のコストが下がったことで、イノベーションに機敏性が求められるようになった」。

米国では大きなコンピューター会社があり、多くの資金と技術者を擁したボストンではなく、グーグルなど少人数で開発するシリコンバレーで成功例が相次いだ、と指摘した。400以上のプロジェクトがあるMITメディアラボで成功の基準となる3つの言葉はユニークさ、インパクト、マジックという。

創発民主制という新しい政治のあり方を提言している。これまで主流のマスメディアが政府と国民をつないでいた。しかしソーシャルメディアが登場したことで、情報を消費していた国民がネットワーク上の議論の場に参加できるようになった変化が大きな影響をもたらす、と主張する。

NYTの仕事を引き受けたのは「マスメディアが生き残らないと大変な世の中になると思ったから」。ピュリツァー賞の申請書を読み、プロのジャーナリストがいて国と闘っていい姿勢の会社があり、初めてできることを痛感したという。「NYTの競合はインターネットで文字をガンガン出すCNN。一方でNYTは動画を始めている」とも。

日本のマスメディアの生き残り策を問われ、「新聞がもうからなくても、テレビや球団を持っていて死なないようにできているようで、うらやましい。いろんなメディアが融合するのも選択肢の1つ」と答えた。米新聞社の経営に携わり、発言の視野がより広がったように感じた。

ゲスト / Guest

  • 伊藤穰一 / Joi Ito

    マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長 / Director, MIT Media Lab

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