2013年05月31日 13:15 〜 14:15 10階ホール
マルズーキ チュニジア大統領 記者会見

会見メモ

第5回アフリカ開発会議に出席するために来日したマルズーキ・チュニジア大統領が会見した。治安の回復や憲法の草案作りが順調に進んでいると話した。若年層の雇用対策や安倍首相の人材育成を重点にしたアフリカ支援についてなど、多岐にわたる質問に答えた。長年にわたる日本からの支援に対しても感謝の念を表明した。

司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日経新聞)

通訳 臼井久代(フリーランス)

駐日チュニジア大使館のページ

http://www.tunisia.or.jp/


会見リポート

サハラ以南支援へ 三角協力進めたい

脇 祐三 (企画委員 日本経済新聞コラムニスト)

フランスに留学して医師となり、本国で弾圧にめげず人権運動を進めた闘士だ。世俗主義・リベラル勢力のまとめ役として「ジャスミン革命」に参加し、欧米での評価も高い。

「アラブの春」について、「人民が起こした革命で、リーダーもイデオロギーもないのが特徴」と説いた。目下の大きな課題は、①新たな政治体制の構築、②経済の苦境の克服、③治安の確保──の3つだという。

草案づくりが進む新憲法では「独裁が復活しないよう、首相と大統領が権力を分かち合う」政治体制を考えていると説明した。権力分散構想は、イスラム勢力と世俗主義勢力の対立を和らげる知恵かもしれない。

政治変動の背景になった若者の雇用問題を短期間で解決するのは不可能だ。大統領は「将来への展望と希望を示すことが重要だ」と強調し、それがハッキリしていれば、若者は物事を冷静に考えてチャンスを待つことができると語った。

政治家はちゃんと新憲法づくりを進めているのか。経済はちゃんと回り始めているのか。汚職はなくなっているのか……。移行期には、プロセスの現状が国民から見える透明性が不可欠という説明も印象に残る。

今回の来日は、第5回アフリカ開発会議(TICAD5)に出席するためだ。

日本のアフリカ支援については、「チュニスの近郊に日本の協力で開設したテクノパークが、知識と技術の移転のほか、人としてどうあるべきかの倫理も含めた人材育成の場になる」と指摘した。そのうえで、日本とチュニジアがともに参加し、サハラ以南の国々を支援する「三角協力を、ぜひ進めたい」と語った。

エモーションよりも理性を感じさせる記者会見だった。


ゲスト / Guest

  • モンセフ・マルズーキ / Moncef Marzouki

    チュニジア / Tunisia

    大統領 / President

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