会見リポート
2013年05月13日
15:30 〜 16:30
10階ホール
研究会「鳥インフルエンザ」尾身茂 新型インフルエンザ等対策有識者会議会長
会見メモ
尾身茂・新型インフルエンザ等対策有識者会議会長(WHO西太平洋地域事務局名誉事務局長)が、「危機管理としての感染症対策として」のテーマでインフルエンザの歴史などを総括した後、中国で拡大している鳥インフルエンザ(H7N9)の特徴などを説明した。H7N9については、現在までヒトからヒトへの感染の証拠はない。引き続き警戒は必要だが、今すぐパンデミックになるような状況にはない、とした。その後、同席した、内閣の新型インフルエンザ等対策の田河憲太室長が、対策の行動計画案の概要を説明した。
司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)
内閣官房新型インフルエンザ等対策室のウェブサイト
会見リポート
鳥インフルエンザ 事態終息まだ早い
藤野 基文 (毎日新聞科学環境部)
他の鳥インフルエンザウイルスは夏に感染者が減少し、冬に増加する。今回のウイルスも同様の可能性があるとみる。また、感染源・経路が解明されていないことも指摘した。
中国当局は、「市場の生きた鳥が感染源」との見方を示している。中国CDC(疾病センター)が4月17日までの感染者を分析したところ、調査できた人の77%が鳥などと接触しており、遺伝子分析の結果、患者のウイルスと鳥から採取したウイルスが似ていることが分かっているためだ。また、市場の鳥を殺処分した後に、患者が減少傾向を示していることもある。
しかし、尾身会長は「鳥からヒトへ感染する間に、他の動物などを挟んでいる可能性がある」とみる。鳥と接触していない感染者もいるほか、ウイルスの遺伝子の塩基配列には直接感染したとは考えられない相違点があるからだ。「対策のために感染源と経路の特定が重要」と話す。
研究会ではパンデミック(大流行)が起きた場合の被害についても言及した。2009年にパンデミックを引き起こしたH1N1型は多くの人が基礎免疫を持っていたと思われる。一方、今回のH7N9型はヒトが免疫を持っていないため、「被害が大きくなる可能性がある」とした。
パンデミックが起きた時には、初期対応の重要性を強調。09年の際は、対応が過剰との非難も上がった。しかし、最初に感染の広がりが見つかった関西地方では原因ウイルスを駆逐することに成功した。また、国内の死亡率は10万人あたり0・2人と世界で突出して低かった。「新しい感染が起きた時、公衆衛生的な対策が重要になる」と主張した。
ゲスト / Guest
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尾身茂
新型インフルエンザ等対策有識者会議会長
研究テーマ:鳥インフルエンザ