2013年04月19日 15:30 〜 16:30 10階ホール
安倍晋三首相 記者会見

会見メモ

安倍晋三首相が、医療、雇用、子育て支援分野での成長戦略を発表した。 
司会 日本記者クラブ理事長 吉田慎一(朝日新聞)

会見リポート

アベノミクスとは精神主義と見つけたり?

倉重篤郎 (毎日新聞論説室専門編集委員)

アベノミクス。果たしてどんな3本目の矢が放たれるのか。この日の10階記者会見場は、安倍晋三政権の成長戦略の初のお披露目というだけでなく、当クラブで4年ぶりに行われる首相会見ということもあり、常ならぬ熱気が感じられた。
そのクラブの期待に安倍首相はそれなりに応えてくれた。冒頭のスピーチで「再生医療」「若者」「女性」という3本柱の政策を発表、これでもか、というほど具体的、かつ詳細な説明を行った。
第1の柱で曰く。「先端医療研究の戦略や予算配分の決定権限を持つ、日本版NIH(国立衛生研究所)を創設します。人工多能性幹細胞(iPS細胞)の利用など再生医療の実用化に向け、規制緩和や医薬品の審査期間を短縮するための法案を今国会に提出します」
第2の柱では、「グローバル化の中で海外留学に挑戦する学生の不利益にならないよう、現行の就職活動のスケジュールを3~4カ月後ろに倒すよう経済界に要請しました」。
そして、第3の柱に力が入った。「最も生かし切れてない人材とは何か、それは女性です」と会場をぐるりと見渡した上で、①全上場企業が役員に1人以上の女性を登用する②20万人分の保育の受け皿を確保し、平成29年度までに待機児童ゼロを目指す③育児休業を3歳まで取得できるよう、企業に助成金を支給する──との方針を示したのだ。
伊能忠敬、下村治の引用も、興味深かった。日本地図を完成させた伊能にはその55歳になってからの偉業への取り組みをほめたたえ、「どんな困難も、あきらめない強い意志があれば乗り越えられる」と述べ、所得倍増政策で著名な下村理論からは、成長政策とは現に持っている潜在能力を引き出し発揮させることにある、という部分を切り出した。くたびれた熟年期の日本経済に伊能的な活躍を期待すること。そして、意識的な楽観主義。アベノミクスとは、精神主義と見つけたり。若干大げさに言うと、そんな印象も持った。
質疑も活発だった。消費税増税を10月の閣議決定段階でどう判断するか、という質問に対しては、財政規律への目配りをしながらもデフレ脱却という内閣の最重要課題を強調し「極めて慎重に考えなければならない」と述べ、聞きようによっては先送りありうべしと受け取れた。
トータル1時間強。日中関係、96条改憲、0増5減問題。何でもござれ、とばかり、なめらかな回答が返ってきた。まさに絶好調、といった感じ。だが、好事魔多し。政権というものは、調子のいい時ほど緩みが出る。上り調子だった第1次安倍政権も、5月連休を境に支持率が急落した。そのへんのリスク管理をどう考えているのか。聞くべき質問をやり損ねてしまい、反省している。

ゲスト / Guest

  • 安倍晋三 / Abe Shinzo

    日本 / Japan

    首相 / Prime Minister

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