2013年04月11日 15:00 〜 16:00 宴会場(9階)
兒玉和夫・前国連次席大使を囲む会

会見メモ

国連の日本政府次席大使を務めた兒玉和夫氏(現・外務省研修所長)が、2年半にわたる経験を踏まえ、「国連と日本外交」のテーマでスピーチをした。国連外交の現場かみると、地政学的な視座からだけでは説明しきれない進展の中に国際情勢があり、「力」、「国益」の概念以上に第3の柱として「価値」の比重が高まってきているのを感じる、と述べた。

司会 日本記者クラブ企画委員 山岡邦彦(読売新聞)


会見リポート

国際政治のメガ・トレンドは「価値」

坂本泰幸 (共同通信外信部)

各国のエゴがぶつかり合う国際政治の場で最近、「力」「国益」に次いで、「価値」が第3の要素として比重を増し、「メガ・トレンド」になっていると兒玉和夫氏は指摘する。
価値とは民主主義拡大であり、住民を虐殺から守ることだ。具体例として、国連安全保障理事会が今年3月に採択した決議で、コンゴ民主共和国東部で展開するPKO部隊に、「介入旅団」として武装勢力を攻撃し「無力化」する任務を与えたことを挙げた。「前例としない」との留保が付いているが、画期的な内容だ。
しかし、安保理5常任理事国が、自らの国益に反する内容の決議に拒否権を行使し、世界や地域の平和や安定について有効な対策を取れない「機能不全」はいまだ解消されていない。国際社会の最大の課題であるシリア内戦について、ロシアと中国は、対アサド政権への制裁警告決議案などに3度、拒否権を行使した。
武力行使や経済制裁承認など、国連で唯一、法的拘束力のある決定ができる安保理の機能不全は極めて深刻だ。日本は常任理事国入りを外交の優先課題にしているが、05年に「大変な外交力、外交資源を投入」(兒玉氏)し、アフリカ連合(AU)と安保理拡大決議案一本化を模索したが、失敗。以降も目に見える進展はない。
AUの強硬姿勢、米国、中国、ロシアの「現状維持」の立場が変わらない限り、有効な安保理改革の実現はほとんど不可能とさえ思える。
だが、日本が安保理改革への努力をやめていいことにはならない。経済力が落ち、国連分担率、政府開発援助(ODA)が減り続ける中、どのような「価値」を重視して国際社会に訴えかけ、各種制約があるPKO参加をどう拡大していくか。政府、国民が真剣に考える必要がある。
会見の最後、日本が常任理事国になれば「何ができるかではなく、できることは何でもしなければならないのだ」との兒玉氏の言葉が重く響いた。

ゲスト / Guest

  • 兒玉和夫 / Kazuo Kodama

    前国連次席大使 / Former Ambassador, Permanent Mission of Japan to the United Nations

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