2013年04月01日 14:30 〜 15:30 10階ホール
チダムバラム インド財務相 記者会見

会見メモ

チダムバラム財務相は、最近のインド経済の動向や投資対象国しての利点などについて語った。

世界経済が困難に直面する中、インドは、2012年度は推計で5.0~5.5%の成長率を達成した。先進国と比較すれば高いが、少なくても8%の成長を目標としていたので、国民の期待を満足させるものではない、とした。

経済・財政改善のために、①財政赤字削減、②インフレ沈静化、③決定済みプロジェクトの予定通り執行に重点的に取り組んでいる、とも。

投資環境については、高い貯蓄率、健全な銀行や市場制度、明瞭な投資制度に支えられている、とメリットを強調した。

海外直接投資(FDI)額は、2011年は460億ドル、2012年も10月までに300億ドルあり、500億ドルを容易に受け入れられる環境にある。

どの分野の投資を歓迎するかの問いには、製造業と答えた。中所得国は国内に大きな製造業のベースをもっている。国内で生産し、消費できるような製造業の土台を築きたいと、と。

司会 日本記者クラブ企画委員 実哲也(日経新聞)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

首相めざすより まず成長率回復

脇 祐三 (企画委員 日本経済新聞コラムニスト)

昨年来、新興国の経済成長率の低下が目立つ。年8%前後の実質成長が続いていたインドも例外ではない。3月末で終わった前年度は、5%台前半にとどまったとみられている。
昨年夏に内相から財務相に転じた。3度目の財務相就任である。「現状はハッピーではない」「少なくとも8%の成長をしないと、国民の期待は満たせない」。1990年代以来、経済改革を推進してきた政治家は、こう語った。そして、今年度は成長率の6%台回復に「ベストを尽くす」とスピーチを締めくくった。
財政赤字の削減、インフレの抑制、経済開発プロジェクトの効率的な遂行。解決すべき課題として詳しく言及したのは、この3つだ。「日本の援助による地下鉄建設は、予算を超過せず、予定通りにできた。だが、うまく進まないプロジェクトの悪例は多い」。世界最大の民主国家が内包する非効率性は頭痛のタネらしい。
3月のBRICS首脳会議で合意した開発銀行設立については、インドや中国の国内の貯蓄をインフラ投資に結びつける意味があると説明した。「世界銀行やアジア開発銀行に対抗するのではなく、補完の機能を担う」という位置付けは、日米欧の警戒感を和らげる狙いだろうか。
言葉を選び、数字を示しながら論理的に説明する。その印象は、政治家というよりもエコノミストに近いが、「インドは法治の国で、受け入れのルールは明確」と投資誘致のPRにも時間を割いた。
会見の最後に、首相をめざすのかという質問が出た。氏は苦笑をまじえて、「私は自分の限界を知っている」「人生には、首相になることよりも、やるべきことが他にたくさんある」と答えた。それでもインドは将来、この人を首相として必要とするのかもしれない。

ゲスト / Guest

  • シュリ・チダムバラム / Shri Chidambaram

    インド / India

    財務相 / Minister of Finance

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