2013年03月12日 14:00 〜 15:15 宴会場(9階)
「グローバルリスク報告書2013」発表会見

会見メモ

ダボスでの年次総会で知られる「世界経済フォーラム」は、世界の1000人以上の有識者、産業界のリーダーなどへの調査を基に、第8回目となる報告書をまとめ、東日本大震災2周年にあわせて日本語版を刊行した。報告書の編集責任者のリー・ハウェル(Lee Howell)マネージング・ディレクターが来日し、記者の質問に答えた。

ハウェル氏は、1つの国や政府では対応できない、グローバルな性格をもち、予見しにくいものが報告書の対象になっているとして、経済、環境、地政学、社会、技術の5つのカテゴリーから50項目のグローバルリスクについて調査した、と説明した。国のレジリエンス(弾力性)についての評価も行ったが、日本については、調査の時期(12年9月)の影響もあるかもしれないがと断りながら、グローバルな競争力が高い国は弾力性能力も高いとの範ちゅうには入らなかった、例外的な国だ、とした。

会見には、土屋聡・世界経済フォーラム日本事務所代表と、翻訳版発行元のマーシュブローカージャパンの平賀暁会長も同席した。

司会 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)
通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

世界経済フォーラムのウェブサイト

http://www.weforum.org/


会見リポート

重大リスク対応能力 日本は16位

泉 宏 (企画委員 時事通信出身)

開催場所にちなんだ「ダボス会議」として知られる世界経済フォーラムが、毎年1月にまとめる「グローバルリスク報告書」2013年版の日本語完全翻訳版が東日本大震災から2年のタイミングで公表された。

同報告書は今回が8回目。世界各国の政治、産業、学術、市民社会など各分野の有識者1000人以上を調査対象に「世界経済にとっての重大なリスク」を発生可能性と影響の大きさの両面で予測させ、その結果を集計・分析したもの。同フォーラムのマネージング・ディレクターとしてとりまとめを担当したハウェル氏が流ちょうな日本語も交えて今後の「グローバルリスク」を語った。

今回の報告書によると世界全体でみて2013年以降10年間で発生する可能性の高いリスクの1~3位は「極端な所得格差」「長期間にわたる財政不均衡」「温室効果ガス排出量の増大」。影響度でみると「大規模でシステミックな金融危機」「水供給危機」「長期間にわたる財政不均衡」が1~3位となる。一方、日本に視点を移すと最も可能性が高く、影響も大きいリスクは「増加の一途をたどる政府債務(長期にわたる財政赤字)」との予測だ。

これは極めて常識的な予測だが、問題はこうしたリスクへの各国の対応能力。報告書ではこの能力を「弾力性」として数値化しているがトップはシンガポールで日本は16位。7位の中国、9位の米国にもかなり差をつけられている。ハウェル氏は「経済力からみても日本はリスク対応能力が相対的に低い」と分析する一方、この調査の間(2012年)に衆院選があり、政権が交代したことから「今年は変わるかも」と危機管理を重視する安倍内閣への期待もにじませた。また、サイバーテロなど従来の発想では対応できないリスクの台頭については「同じリスクを抱えるステークホルダー(国や企業、団体)同士がジョイント(協力)して解決策を探すことが必要」と指摘した。


ゲスト / Guest

  • リー・ハウェル / Lee Howell

    世界経済フォーラム マネージング・ディレクター / Managing Director, World Economic Forum

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