2013年02月20日 13:30 〜 14:45 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」「原子力研究開発の現状 大学の現場から」

会見メモ

福井大学付属国際原子力工学研究所の竹田敏一所長が、福島原発事故後の日本の原子力研究開発の現状について、①福井県の原子力、②原子力人材育成、③原子力の安全確保・原子力防災の観点から話し、記者の質問に答えた。

司会 泉宏 日本記者クラブ企画委員

福井大学付属国際原子力工学研究所のウェブサイト

http://www.rine.u-fukui.ac.jp/


会見リポート

原子力 いまこそ基礎学ぶ人材育成を

若杉 敏也 (日本経済新聞産業地域研究所)

 廃炉中を含め15基の原発を抱える福井県で生まれ育った大島賢一・立命館大教授が、大佛次郎論壇賞を受けた『原発のコスト』(岩波新書)のあとがきで記している。「本書を通じて、これまでの原子力政策を批判的に分析していますが、原子力技術の必要性が失われた訳では決してありません。むしろその逆です」

 2009年設立の福井大学付属国際原子力工学研究所で所長を務める竹田敏一氏は、福島原発事故以来、学生が減ってしまう事態に困惑している。「最近は原子力の研究、教育をじっくりやる体制がとりにくい」と研究所が抱える課題を訴えた。国際的な視野で研究開発と人材育成を推進する目的でキックオフした同研究所は、昨年4月に「原子力防災・危機管理部門」を新たに設置。時代の要請に応えて原発事故への対応にも積極的に乗り出している。それにも関わらず、である。

 今後の人材育成について竹田所長は「原子炉の安全性の基礎をきちんと学ぶ学生がいるのかというのは大問題だ」と強調した。続けて「確かに事故対策は大事です。防災教育とか。ただし防災だけでいいのか。安全性に対する基礎は少し省いても良いというのは、私は間違っていると思います」と持論を展開した。

 大学や研究所の使命は、学問あるいは技術の基礎を丁寧に研究して教えることにある。教育には数年以上の長い期間がかかるから、一時的に原子炉の安全に関する研究に空白ができることは将来に禍根を残しかねない。

 どうしたら、学生が集まるか──。竹田氏は「原子力には夢がある」と語りかける。「安全性の非常に優れた原子力プラント(中略)、そういうのを(我々と)一緒に、あるいはお前ら若いやつが考えてくれよ、と。そういう考えをどんどん出していかないと原子力というのは若い優秀な学生が来てくれない」。言葉の端々に強い危機感をにじませた。


ゲスト / Guest

  • 竹田敏一 / Toshikazu Takeda

    日本 / Japan

    福井大学附属国際原子力工学研究所所長 / Director, The Research Institute of Nuclear Engineering, University of Fukui

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」「原子力研究開発の現状 大学の現場から」

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