2013年02月18日 15:30 〜 17:00 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」「東北学」 赤坂憲雄 学習院大学教授

会見メモ

東日本大震災復興構想会議委員も務めた、赤坂憲雄・学習院大学教授が、現在の復旧・復興は長期ビジョンに基づいたものでない。東北から人と自然の新たなパラダイムをつくっていく必要があると訴えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 橋本五郎(読売新聞)


会見リポート

東北は負けない戦を知っている

橋本 五郎 (企画委員 読売新聞特別編集委員)

「本当に言いたいことは声低く語れ」。赤坂さんの一語一語かみしめるように話す姿から、作家トルストイの言葉が思い浮かびました。「赤坂節」は、テレビなどで我先勝ちに言い募る当世流とは対極にあります。それだけに説得力があります。

東日本大震災からまもなく2年。遅々として復興が進まないのはなぜか、復興の現実から何が見えてくるのか。ひたすら被災地を歩いて被災者の声を吸い上げている赤坂さんから是非聞きたいと思いました。

大震災以来、赤坂さんにとって最も心に残った言葉は、自らも委員だった東日本大震災復興構想会議での建築家・安藤忠雄さんの発言だったといいます。「われわれは30年後、50年後を頭に描きながら議論しよう」。それが欠落しているというのです。50年後には日本の人口は8000万人台にまで減少します。その時漁民にとって海が見えない巨大な防潮堤が必要ですか、というのです。

福島を自然エネルギーの特区にしようと提言したが、「農地だから難しい」と反対論がまかり通っている。原発への対応で「小さな正義」が跋扈し、現地では深刻な「対立と分断」の状況が生まれている。イノブタが大量発生、汚れた「野生の大国」が生まれている──。深刻な負の現実が進行しているというのです。

その一方で赤坂さんには希望もありました。自然エネルギーへの転換を求めて草の根の動きが広がっていることです。会津では「これって自由民権運動よね」という声が聞かれたといいます。赤坂さんは何度も強調しました。「東北は、勝てないが負けない戦を知っている」

原発への対応についてはさまざまな意見があるでしょう。私も東北・秋田の出身ですから、よくわかるのですが、復興3年目を迎えるにあたって「負けない戦」が私たちに求められていることを実感しました。


ゲスト / Guest

  • 赤坂憲雄 / Norio Akasaka

    日本 / Japan

    学習院大学教授 / Professor, Gakushuin University

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」「東北学」

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