2012年12月05日 15:00 〜 16:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」エネルギー政策 田中伸男 日本エネルギー経済研究所特別顧問

会見メモ

前IEA事務局長の田中伸男・日本エネルギー経済研究所特別顧問が、「ポスト福島のエネルギー安全保障戦略―2012年版IEA世界エネルギー見通しを踏まえて」のテーマで話し記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日経新聞)

使用した資料(PDF)

http://www.jnpc.or.jp/files/2012/12/0b1c01da329db94f2119b90d54042a89.pdf

世界エネルギーアウトルック2012年版についてのファンデルフーフェンIEA事務局長の会見はこちらから。

http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/11/r00025044/


会見リポート

原発是か非か二元論でない報道を

脇 祐三 (企画委員 日本経済新聞コラムニスト)

日本でエネルギー安全保障というと、中東からの石油供給の問題を考える。だが、福島の原発事故後の電力供給問題は、地域を超えた送電網の不備など国内にも構造的な弱点があることを示した。


世界を見ると、「シェール革命」の進展で北米が化石燃料の自給に近づく一方、中国やインドなどの輸入はさらに増え、アジアが世界のエネルギー安保の焦点になる。


国際エネルギー機関(IEA)の事務局長を務めた田中さんは、「グローバルな動きを考えずに日本の政策を決めるべきではない」と訴え、エネルギー戦略に欠かせない論点を幅広く語った。


たとえば、多くの原発が再稼働しないままイラン危機が火を噴いたら、カタール産LNGに多くを頼る火力発電が停止する恐れがあり、輸入する燃料の高騰で経常収支が大幅な赤字に転じて、日本への信認が崩れる複合危機も起きかねない──と田中さんは警告する。


国内の改革では、再生可能エネルギーの導入を進めるためにも発送電の分離は避けて通れないし、東西の周波数の違いも10年程度で解消すべきだと説いた。


送電網やパイプラインが国境を超えてつながり、集団安全保障を考えている欧州諸国と対比して、「北東アジアでも日ロや日韓の送電網構築などを追求すべきだ」と提言。「シェール革命によって天然ガス市場の売り手優位が崩れ、ロシアも柔軟にならざるを得ない。日本はこれを好機ととらえるべきだ」とも語った。


福島の事故を招いた電力業界や政府の責任に言及したうえで、田中さんは「政治家は原発のメリットも国民に説明すべきだ」と主張し、原発は是か非かの単純な二元論に陥らないようメディアにも求めた。


「多様なエネルギーの選択肢を持つことが、安全保障や国際競争力維持に不可欠」というメッセージは、明確に伝わっただろう。


ゲスト / Guest

  • 田中伸男 / Nobuo Tanaka

    日本 / Japan

    前IEA事務局長・日本エネルギー経済研究所特別顧問 / Former Executive Director, IEA

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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