2012年11月19日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「領土問題」3 「北方領土」 石郷岡建 日本大学教授

会見メモ

日本記者クラブ研究会「領土問題」の3回目のゲストとして、元毎日新聞でモスクワ特派員経験などがある石郷岡建・日本大学教授が北方領土問題について話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 山岡邦彦(読売新聞)


会見リポート

知的刺激に満ちた北方領土論

大野 正美 (朝日新聞機動特派員)

「領土問題では日本側だけでなく、相手の国の人とも話をするのが当然なのに、そうなっていない」

ロシアをはじめ、東欧、中東、アフリカを新聞社の特派員として駆け回りつつ、日本のことを考えてきた人だ。北方領土問題がテーマの今回の話も、「外務省からしか取材しない」政治部主導型になっていると見る日本での報道のあり方に、まずくぎをさすことから始まった。
特に力を込めたのが「『固有の領土』といっても、ロシア人には、まったくわからない」点だ。

外務省は、国後、択捉両島が「千島列島と違って一度も外国の領土になったことがない」ことを、ロシアに返還を求める「固有の領土」論の根幹に置く。だが、ロシア人は、領土拡大の一環で「16世紀にエルマークがシベリアに遠征し、さらにラッコの毛皮を求めて1711年に千島列島に南下してきた」民族である。

その前はモンゴルに攻め込まれ、森林帯にひそんでいた。領土も国境も絶えず変わってきたロシアの人々が、「固有の領土」論を理解するのは不可能というわけだ。

こうしたロシアに、外務省のようにひたすら条約の解釈論を言いたてても領土問題は解決しない。結局は「政治家が政治解決をはかるほかない」。その点で鍵を握るのが「中国の巨大化に対するロシアの焦りだ」と石郷岡さんは見る。

実際には「プーチン大統領は、日本からしかるべき譲歩を得られるなら、島を日本に引き渡してよいと考えている」。その譲歩とは「中国への対抗戦略での提携、連盟を組み、中国を暴走させずに平和に国際秩序に取り入れる協力だ。2島とか3島とか、返す島の数ではない」。

近著の『論点整理 北方領土問題(ユーラシア・ブックレット)』と同様、通説にとらわれない知的刺激に満ちた領土論だった。



ゲスト / Guest

  • 石郷岡建 / Ken Ishigooka

    日本 / Japan

    日本大学教授 / Professor, Nihon University

研究テーマ:領土問題

研究会回数:0

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