2012年11月09日 13:30 〜 15:00 10階ホール
著者と語る『ケインズはこう言った』(NHK出版新書) 高橋伸彰 立命館大学教授

会見メモ

立命館大学の高橋伸彰教授が、「日本経済混迷の根因を探る-「ケインズはこう言った」-」のテーマで話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


会見リポート

労働時間短縮でデフレ脱却を

八牧 浩行 (時事通信出身)

開口一番「この会場には11年10カ月ぶり。小泉政権誕生とともに東京では忘れられたエコノミストの一人になった」と会場を笑わせた。1994年から6回も日本記者クラブゲストに呼ばれた売れっ子経済学者だったが、新自由主義全盛時代にはお呼びがかからず、「この本で復活させていただいた」というわけである。

ケインジアンの代表的な論客。周知のように、リーマンショックで新自由主義が地に堕ち、総需要政策を掲げるケインズ主義が復活。「ケインズ経済学の神髄は、その時々における危機の本質を洞察し、解決のために現実的な政策を提言することにある」と強調した。

ケインズが活躍した20世紀前半の英国と同様に深刻な長期デフレに陥っている日本で、「デフレ脱却論」が声高に叫ばれているが、超金融緩和などでただ脱却を目指すだけでは日本人は豊かになれない、と指摘。「前原誠司氏が日銀に圧力をかけに行く必要はない」と歯切れがいい。

「デフレは症状でありその根本原因を直さなければならない」とし、その元凶はかつてケインズが注目した「非自発的失業」の延長上にある「非自発的雇用」(低賃金の非正規雇用)だと強調する。

「今の日本のデフレは企業損失の現われではない。人件費の抑制によってデフレ下でも企業は利益を確保している」と分析。「家計所得の減少(賃金減少)によるデフレであり、賃金下落を止めることが先決」と結論付けた。その解決策として「法定労働時間の抜本的な短縮」を挙げた。

それにしても、マネタリズム、新自由主義、ケインズ…。世の経済状況によって盛衰する経済学とは何なのか、と考えざるを得なかった。経済学とは実態に即した理論構築ではなく、理論に当てはめて実態を都合よく解釈する学問なのか? 高橋教授も「(経済学者は)行き詰まると『することにしよう』と希望的な結論を導き出してしまう」と喝破していた。


ゲスト / Guest

  • 高橋伸彰 / Nobuaki Takahashi

    日本 / Japan

    立命館大学教授 / Professor, Ritsumeikan University

研究テーマ:著者と語る『ケインズはこう言った』(NHK出版新書)

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