2012年10月09日 18:00 〜 19:15 10階ホール
上映会 3Dドキュメンタリー①「3D 東日本大震災」(15分) ②「疾走!相馬野馬追~東日本大震災を越えて~」(57分)

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会見リポート

ふるさとへの誇りと愛着

鈴木 博信 (NHK出身)

84年に発足した「NHKメディアテクノロジー」社が、20年余りにわたって蓄積した3D撮影の技術を「台本のない被写体」にふりむけて作成した、初のドキュメンタリーと聞いた。立体感が自然で、見終わった後も目に不快な疲労感は全く残らなかった。


1本目は気仙沼など7地区の1カ月後の光景だ。陸前高田市の、「奇跡の1本松」の姿に息をのむ。


大災害と原発事故で生活のメドもつかない市民も大勢のこっている南相馬市の人たちが、今年の夏、力をふり絞って復活させたのが「相馬野馬追」だ。代々、法螺貝吹きの役をつとめてきた小幡家の姉妹(9歳と6歳)が鉢巻き鎧姿で法螺貝を吹き鳴らして出陣する地元の騎馬武者たちを祝福したあと、自らも馬にまたがる。2人が背筋をのばし凛として馬を御してすすむ姿は、1000年を超えて続くこの祭事こそ、地域の人たちのふるさとへの誇りと愛着の表現そのものであることを物語っていた。


東京・江東区の「東雲住宅」には南相馬市とその周辺から避難してきたおよそ1300人が住んでおり、その集会所でも、この番組が披露された。久々にふるさとの情景にふれて1カット毎に、「あの人だ、この人だ!」とどよめきが絶えなかったという。


もっとも、プロデューサーをつとめた智片通博さんによると、「集まってくれたのは日頃から集会所に出入りして福島から届く地元紙をむさぼるように読んでいる50人ほどの常連の方々にとどまった」とのこと。


東京からバスで5時間半。列車は福島駅までしか復旧していないうえ、原発から20キロ圏内は昼間しか立ち入れず電気も止まったままだ。陸の孤島化した故郷から切りはなされ、地元を描いた番組の上映会にすら出てくる気になれない大半の避難民の心根を想像すると、胸がつまる。



ゲスト / Guest

  • 上映会 3Dドキュメンタリー ①「3D 東日本大震災」(15分) ②「疾走!相馬野馬追~東日本大震災を越えて~」(57分)

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