2012年09月25日 15:00 〜 16:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」エネルギー政策 柏木孝夫・東京工業大学教授

会見メモ

総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の柏木孝夫委員(東京工業大学特命教授)が、最適な電源構成やエネルギー政策の見直しなどについて話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)

東京工業大学の柏木孝夫教授のページ

http://www.eae.titech.ac.jp/Japanese/Division/Energy/ESD/kashiwagi.html


会見リポート

電気と熱を一緒に考えるべきだ

今井 伸 (毎日新聞出身)

柏木さんは、新しいエネルギー政策を議論している基本問題委員会メンバーだ。民主党政権の「開かれた議論を」という方針により、25人の委員の中に彼のような生粋のエネルギー学者は少ない。

9月18日に、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という政府方針に、意見書を出し、かみついた。「文言は努力目標なのに、国際的に『原発ゼロ』が独り歩きしかねない」というのが理由だ。

柏木さんは本来、いわゆる原発推進派ではない。意見書でも「縮原発に異論はない」としている。

この人の真骨頂は、3・11のずっと前から、①エネルギーは電気だけでなく「熱」も一緒に考えるべきだ、②大規模集中型電源から分散型電源へ─と主張していたことだ。この2つの考えは、近く決まる予定の新しいエネルギー政策の骨格になっている。まさに先見の明と言えよう。

原発については、「エネルギー政策は、国力を高めるのが目的」という視点で考えるべきだとする。原発を再稼働しないと電力価格は上昇し、産業空洞化・雇用問題に波及する。また安価に化石エネルギーを購入するのが困難になると主張する。

さて、日本が目指すべきエネルギー利用法だ。柏木さんは、原発代替として、①即効性ある省エネ・節電、②再生可能エネルギー導入、③化石燃料の高度利用、④国際エネルギーインフラ構築─を提案した。遠隔地の大型発電所から、需要地に一方向に送る大規模集中型電源は7割に減らし、3割は電気を使用する場で発電する分散型電源にするのが理想とした。大規模型では発電の際に発生する熱を捨てるので、元のエネルギーの50%以上がムダになる。分散型だと熱を冷暖房や給湯に使え、国全体では大幅に省エネを実現できる。


「EUでは『熱を制するものは電気を制する』と言われている。全体最適を考えるべきだ」と結んだ。

ゲスト / Guest

  • 柏木孝夫 / Takao Kashiwagi

    日本 / Japan

    東京工業大学特命教授 / Prof. Tokyo Institute of Technology

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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