2012年09月07日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「シリア」加藤朗・桜美林大学教授

会見メモ

現地調査のためシリアを訪れていた加藤朗・桜美林大学教授が、8月7日にダマスカスで逮捕拘留されていました。ダマスカス市内や拘置所の様子などについて話し、記者の質問に答えた。

司会 瀬川至朗 日本記者クラブ企画委員

加藤朗教授のブログ「目黒短信」

http://mhe00465.cocolog-nifty.com/


会見リポート

「塀の中」で見たアサド政権の裏の顔

貫洞 欣寛 (朝日新聞国際報道部)

内戦下にあるシリアでの市民の暮らしを見ることを目的にダマスカスを訪れた加藤朗教授は、到着翌日から5日間にわたり治安機関に拘束された。「私としては大失態」と前置きしながら当クラブで語った体験は、普通の取材では見ることができない、「塀の中」に隠されたアサド政権の裏の顔を知る貴重な機会となった。

東京のシリア大使館で観光ビザを取った加藤氏がダマスカスに入ったのは8月6日。市中心部では意外なほど戦闘の形跡がなく、通常に近い市民生活が営まれていた。翌日、激戦地アレッポに行けるかどうかを調べるため市内のバスターミナルへ。そこで政権軍のヘリが市街地攻撃を始めたため、カメラを取り出した。その時、秘密警察員に腕をつかまれて拘置施設に連行され、そのまま拘束された。

加藤氏は暴力にはさらされなかったものの、雑居房では反体制派とみられる大勢の人々が押し込められ、奥の尋問用の部屋からは革のムチがしなる音や、看守が殴りつける音が響き、拷問の存在は明白だった。

入管施設に移送されると、そこではワイロが横行していた。係官らはカネをせびる一方でアサド大統領一族の写真を飾り、忠誠心は高かった。拘束中、近くで激しい爆発音や銃撃音も聞こえた。12日に強制退去となった。

シリアで見たものは、戦闘を台風一過のようにやり過ごしながら暮らしを維持しようとする市民の姿と、政権の横暴と腐敗という反体制派の主張を裏付ける光景。一方での政権基盤の堅さだった。施設内でも食事は豊富で、物資不足は感じられなかったという。「軍の離反などで内部崩壊しない限り、武力による政権打倒は困難」という見通しは、実体験があるだけに説得力を持って響く。

ゲスト / Guest

  • 加藤朗 / Akira Kato

    日本 / Japan

    桜美林大学教授 / Prof. Obirin University

研究テーマ:シリア

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