2012年07月11日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「欧州経済」②竹森俊平・慶応大学教授

会見メモ

研究会「欧州経済」の2回目のゲストとして、慶応大学の竹森俊平教授が「そしてドイツだけが残った―ユーロ危機の行方」のテーマで話し、記者の質問を答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


会見リポート

欧州危機、不安定の構図が拡大

梶原 誠 (日本経済新聞編集委員)

研究会「欧州経済」の2回目のゲストは、国際経済の論客だ。


「欧州情勢については一貫して悲観的。事態が収まってきているという欧州の政治家もいるが、全然そんなことはない」。最初に断ったとおり、竹森教授の見方は厳しい。


分析の核心は、不安定の構図が拡大していることが一目で分かる1枚のグラフだった。


「GIIPS」と呼ぶギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインから資本が逃げ、安全を求めてドイツに向かっている。


欧州危機の前は逆で、資金がドイツなどから有利な運用先を求めてGIIPS各国の国債や不動産などに向かっていた。今止まらないのは外国へのすさまじいマネー逆流。払えなくなる危うさと背中合わせだ。


「負の連鎖」も進んでいる。問題国の国債が売られ、国債を大量に持つ銀行は痛み、貸し渋りが加速し、景気は停滞する。財政は悪化し、国債はさらに売られる。「そしてドイツだけが残った」とはこの日の演題であり、竹森教授が執筆の構想を温めている本のタイトルとのこと。


欧州危機は発生からすでに3年近く経過している。しかし竹森教授は「よく3年間も(経済システムが)メルトダウンせずにすんでいる」と警戒を崩さない。


ならば、危機はいつまで続くのか。竹森教授は今回の危機を、世界大恐慌に重ねる。1929年の米国株の大暴落に端を発し、31年にオーストリアの大手銀行が破綻して世界に混乱が広がった。今回も2008年のリーマン・ショックというウォール街の衝撃で危機が始まり、欧州に飛び火して世界を悩ませている。


ロゴフ、ラインハート両氏の『国家は破綻する』によれば、各国が大恐慌を脱するまでに平均10年かかっている。リーマン・ショックからまだ4年。先は確かに長い。



ゲスト / Guest

  • 竹森俊平 / Shumpei Takemori

    日本 / Japan

    慶応大学教授 / Professor, Keio University

研究テーマ:欧州経済

研究会回数:0

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