2012年05月17日 15:30 〜 16:30 10階ホール
著者と語る『プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る』 レム・コールハース オランダ人建築家

会見メモ

建築家レム・コールハースが、戦後日本の建築運動(メタボリズム)について紹介し、記者の質問に答えた。


司会 日本記者クラブ理事 会田弘継(共同通信)

通訳 大野理恵、吉國ゆり(サイマル・インターナショナル)


『プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る』(平凡社)特設ページ

http://projectjapan-heibonsha.blogspot.jp/


会見リポート

日本の建築メタボリズムから学ぶこと

髙橋 直彦 (読売新聞生活情報部次長)

ニューヨークの都市の成り立ちを「錯乱のニューヨーク」という本にまとめたかと思えば、バブル期の福岡で集合住宅を設計し、ニューヨークでプラダの旗艦店を手がけた後に、ハーバード大の学生らとショッピングモールを研究し、巨大なメビウスの輪のような外観の建築を北京に完成させて物議を醸す……。


オランダ出身で68歳のレム・コールハース氏は現在、世界で最も注目され、多忙な建築家の一人だろう。そんな彼が近年、取り組んできたのが「メタボリズム」。1950年代末に、日本で始まった建築運動だ。


菊竹清訓、黒川紀章、大高正人、槇文彦氏ら当時の若手建築家らが中心となり、社会の変化に対応しながら柔軟に変容する建築や都市計画を、生物の新陳代謝(メタボリズム)になぞらえて提案した。海上に都市が拡張していったり、一つの住戸ユニットが縦横に接続することで変化し続けたり、いずれも壮大かつ前衛的な計画で、高度経済成長期の日本の高揚感を反映していた。


もっとも、計画の多くが実現に至らず、後にその楽観性が批判の対象となり、活動の意義が日本で検証される機会は少なかった。ところが、コールハース氏は、その活動に注目し、当事者へのインタビューを重ね、「プロジェクト・ジャパン」という浩瀚な書にまとめた。今春出版された日本語版は700ページを超す。


しかし、今なぜメタボリズムなのか? そんな素朴な疑問に対し、彼は「市場の論理が圧倒的な支配力を持つ現在、建築をパブリックなものとして考え、建築家同士が連帯して行動したメタボリズムのメンバーから学ぶべき点は多い」と答える。


それは、大震災を経て復興を目指す現在の日本にとっても、示唆に富むものだろう。会見での語り口は物静か。しかし、本人の熱い思いが伝わってくる貴重な機会となった。



ゲスト / Guest

  • レム・コールハース / Rem Koolhaas

    オランダ人建築家 / Architect of Netherlands

研究テーマ:著者と語る『プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る』

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