2012年01月23日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「2012年経済見通し」「アジア経済」河合正弘 アジア開発銀行研究所所長

会見メモ

河合氏の使用した資料

http://www.jnpc.or.jp/files/2012/01/de3b2c782bd0ffe5a163d31c111ae0ec.pdf


研究会「2012年経済見通し」でアジア開発銀行研究所の河合正弘所長が①欧米経済の混迷②新興アジア経済のダイナミズムと課題③日本は何ができるか――について話し、質問に答えた。


河合さんはアジア経済の当面のリスク要因として、①欧米経済が大幅に落ち込みアジアの輸出減やアジア向け投資資金の流出につながる恐れ②新興アジア経済の減速、インフレと成長のバランスの失敗、中国経済の減速・ハードランディングの可能性――を指摘した。ユーロ危機に対処するためアジアがIMFを通して資金供給し、ヨーロッパの債権者となって危機管理にかかわる方向を示した。

日本の課題として、対アジア広域経済連携協定をめざす必要を強調した。TPPについて、アジア太平洋自由貿易圏構築のルール作りに参加できるなどのメリットを列挙し「TPPに入らないデメリットは大きい。参加国は競争力がつくのに、入らない日本は落ちていく」とTPP参加を促した。その上で、経済統合の二つの流れとして①米国が入らない東アジア主導のASEAN+3/+6②中国が入らない米国主導のTPP――をあげた。日本には双方が重要であり、双方に入れる大国は日本だけであるため、日本がブリッジとしてASEAN+6とTPPをつなぐ広域経済圏を作り出せると説明した。


司会 村田泰夫 (日本記者クラブ企画委員)


アジア開発銀行研究所のホームページ

http://www.adbi.org/


会見リポート

欧州危機による資金流出に備えよ

野坂 雅一 (読売新聞論説副委員長)

世界銀行エコノミストや副財務官などの公職の経験も豊富な国際的な経済学者である。欧州債務危機が新興アジア経済に及ぼす影響や日本経済の課題などについて、幅広く論じてもらった。


「2010年当時ならギリシャはユーロ圏から退出できた。しかし、今となってはイタリアなど周辺国に深刻な影響を与え、退出はできない」。発端となったギリシャ財政危機に対する欧州の初動措置の遅れをまず批判した。


欧州の混乱が長期化すると、好調だった新興アジアに深刻な影響を及ぼすと懸念している。特に強調したのが投資資金の急激な流出である。


10年末ごろまで新興アジアには、欧米などから資金が流入し、それがバブル経済やインフレを招くと警戒されたが、昨年以来、資金が逆に流出する兆候がでていると分析した。


最近会談したインドネシア財務省高官によれば、インドネシアは資金流出による経済への打撃を恐れ、非常時に備えていたとか。世界を飛び回り、常にホットな情報をつかんでいるのだろう。


アジアがリスクを乗り切る方策として指摘したのは、流動性危機の際にドルなどを融通し合うチェンマイ・イニシアティブの強化だ。アジア開発銀行の調整力も一段と問われよう。


景気回復がもたつく日本には、環太平洋経済連携協定(TPP)など経済連携の強化を求めた。


だが、アジアの活力を取り込む好機を日本が生かせなければ、「失われた20年が、失なわれた30年、40年になりかねないと危惧する」。講演を締めくくったその警告を真摯に受け止めたい。



ゲスト / Guest

  • 河合正弘 / Masahiro KAWAI

    日本 / Japan

    アジア開発銀行研究所所長 / Dean and Chief Executive Officer, Asian Development Bank Institute

研究テーマ:2012年経済見通し

研究会回数:0

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