2012年01月13日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
研究会「2012年経済見通し」「欧州危機」小川英治 一橋大学大学院教授 

会見メモ

シリーズ「2012年経済見通し」 ユーロ危機と欧州経済の展望

司会 日本記者クラブ企画委員 原田亮介(日本経済新聞)

使用パワーポイントpdf http://www.jnpc.or.jp/files/2012/01/b6d06307af8a56932597d18a3f1a33b6.pdf

会見リポート

焦点はイタリア経済 最悪は回避?

桜庭 薫 (日経CNBC経済解説部次長)

小川教授の話は、ジャーナリストとは問題に対する時間軸のとらえ方が異なり、長期的な視点を重視していた点で興味深かった。欧州経済の行方は世界第3位の国債発行残高を誇るイタリアにかかっているが、「危機が本格的に波及することはないだろう」と楽観的な見立てだった。「欧州各国が相互監視のもと、財政規律を高める制度を導入できる」なら、危機は収束に向かう。欧州各国が第二次大戦後、半世紀をかけて築き上げた統合の成果を無に帰すようなことをするとは現実的には考えにくい。


しかし、欧州連合(EU)の超国家機関としての弱さが今回の危機を深めた側面もある。どの国も統合には賛成だが、財政をはじめとする主権の委譲に反対してきた経緯がある。財政新条約の実効性を高めるのは容易でないだろう。


もう一つの焦点であるギリシャの行方について、市場は名実共に大国として復権したドイツが「お荷物」と化しているギリシャをどこまで支えるかを見極めようとしている。小川教授は「ギリシャのユーロ離脱はない」とし、「ユーロ圏が制度として崩壊することはない」とみている。


地政学的な重要性も加味すれば、これからも欧州はギリシャを抱え込まざるを得ないだろう。ギリシャが反省の色を見せないのが支援する側の頭痛の種だが、ギリシャは19世紀前半の独立後、大国の思惑に翻弄されるうちに援助慣れし、妙なしたたかさを身に着けた。理屈を超えた欧州の奥深さについて考えさせられる一日となった。



ゲスト / Guest

  • 小川英治 / Ogawa Eiji

    日本 / Japan

    一橋大学大学院教授 / Professor , Hitotsubashi university

研究テーマ:2012年経済見通し

研究会回数:0

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