2011年12月13日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
著者と語る『タイに渡った鑑識捜査官』

会見メモ

司会 日本記者クラブ企画委員 露木茂


並木書房の『タイに渡った鑑識捜査官』のページ

http://www.namiki-shobo.co.jp/


会見リポート

鑑識プロ タイで4千の遺体と奮闘

谷田 邦一 (朝日新聞編集委員)

タイ警察の事件現場で、通算13年、鑑識技術を指導した体験を『タイに渡った鑑識捜査官』(並木書房)にまとめた。


ドラマで鑑識や科学捜査といえば、俳優の沢口靖子や西村和彦が浮かぶが、本物はちょっと違った。


太い腕、厚い胸板。柔道で鍛えた講道館6段の姿は、とても70のお年には見えない。警視庁では、三菱重工爆破事件からオウム真理教事件まで36年、鑑識一筋を貫いたという。


無残な遺体と向き合い、犯行現場をはいずる日々。「舞台の幕裏の仕事」と控えめだが、犯罪捜査の成否を決定づける重要な役回りである。


その経験を買われ、1995年に国際協力機構(JICA)から派遣されたのがタイとの出会いだった。退官後もタイ側から強く請われ、シニアボランティアとして再派遣、ようやく昨年7月に帰国した。


「心を開き、現場で一緒にやって体で覚えさせたかった」


若手の警察官たちと寝食をともにし、冠婚葬祭にも頻繁に顔を出す型破りな教官だったそうだ。残忍な殺人事件、スラム街の火事、日本人暴力団との渡り合いなど、著書はタイの路地裏ガイドとしても楽しめる。


2004年のインドネシア・スマトラ沖の大津波は、タイ南部も襲い、その被災現場に遭遇した。


断片情報だけで徹夜で駆けつけたら、漁村が壊滅し、寺院には大量の棺が運び込まれていた。


それから3カ月、猛暑と異臭のなか、身元確認の責任者として同僚らと約4千体の遺体の指紋採取や歯型照合に奮闘した。支えたのは「一日も早く肉親のもとに返したい」という気持ちだったという。


タイでは15歳以上の国民の指紋登録が制度化されている。日本では賛否が割れるが、東日本大震災での身元確認の難しさを知るにつけ「希望者だけでも指紋の登録ができるようにしてはどうか」と提言する。


ゲスト / Guest

  • 戸島国雄 / Kunio TOJIMA

    日本

    元警視庁警部

研究テーマ:著者と語る『タイに渡った鑑識捜査官』

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