会見リポート
2011年11月25日
15:00 〜 16:30
10階ホール
研究会「世界の新聞・メディア」 ⑮ 小林恭子 在英ジャーナリスト
会見メモ
会見リポート
英国メディア 完全デジタル化で再生?
森 千春 (読売新聞論説委員)
「玉石混交だけれど、元気があって多彩で面白い」。在英10年のジャーナリスト、小林恭子氏が語った自身の英国メディア観だ。
その背景には「作る側の論理ではなく、情報を受ける側の論理で考える」メディア側の姿勢があるという。換言すれば、サービス精神が旺盛だということだろうか。
小林氏によると、最近の英国メディア界は、「全てがデジタル化へ」向かう傾向を見せている。
英国の新聞部数の長期低落傾向は顕著だ。2年ほど前には新聞関係者から、「紙の新聞はなくなるのか」といった悲観論が聞かれたが、最近では、「割り切った」観がある。読者も広告主もデジタルの世界に進みつつあるのだから、そちらに手厚く資金と人材を投入する──そんな積極姿勢に転じたとの見立てだ。
その結果、新聞社が公共放送BBCとともに「ネットメディアとして活躍」しているという。
たとえば、英国の新聞社は、特ダネを得た場合、新聞の締め切り時間を待たずに、インターネットを通じて報じるようになった。新聞社のウェブサイトに限らず、時に記者のブログやツィッターでも特ダネが発信される。
ただし、新聞のウェブサイト閲覧有料化については、「『フィナンシャル・タイムズ』は成功したと言われるが、『タイムズ』は成功しているのかいないのか分からない」との説明があり、英国の新聞社がインターネット利用のビジネスモデルを確立したわけではないと察せられた。
小林氏の近著『英国メディア史』(中公選書)を読むと、英国のニュース・メディアが「近代」と重なる長い歴史を有していることが分かる。この研究会は、その英国の老舗メディア群が、いまだ衰えぬ活力で時代の最先端を行こうとしている様子を伝えたと言える。
ゲスト / Guest
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小林恭子 / Ginko KOBAYASHI
在英ジャーナリスト / Journalist
研究テーマ:世界の新聞・メディア
研究会回数:0