2011年10月14日 15:00 〜 16:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 田坂 元内閣官房参与

会見メモ

講演パワーポイントPDF

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/10/7417ff8622ed3f5b9f959a6b8108b77d.pdf


菅政権の内閣官房参与であり、福島第一原発事故対策や原子力政策のアドバイザーだった田坂広志・多摩大学大学院教授が、「福島原発事故が開けたパンドラの箱 野田政権が答えるべき国民の7つの疑問」と題して、事故の教訓や今後の課題について語った。


田坂氏は、第一原発4号炉の使用ずみ核燃料プールの冷却機能が喪失し、むきだしの炉心状態となりメルトダウンになれば、首都圏3000万人避難の最悪のシナリオが起こりうる、と3月から4月にかけて政府で問題になっていたことを明らかにした。田坂氏は原子力工学を専攻し、原発推進にかかわってきた専門家。「日本の原発は世界で最も安全に操業する、と思っていた。不明を恥じる」と述べた。高レベル放射性廃棄物の保管について「10万年の安全問題は社会的受容の問題だ」と指摘した。国民の「7つの疑問」として①安全性②使用済み燃料の長期保管③放射性廃棄物の最終処分④環境中の放射能⑤社会心理⑥核燃料サイクル⑦コスト――をあげ、対策を説明した。


田坂広志さんの公式サイト

http://www.hiroshitasaka.jp/index.php


会見リポート

根拠なき楽観が最大のリスク

塚田 健太 (毎日新聞政治部副部長)

「年内の冷温停止状態達成」「汚染水は浄化処理で減少」…。東京電力・福島第1原発事故の収束への取り組みを巡り、政府から「順調な進展」を強調する発言が相次いでいる。


しかし、3月末から約5カ月間、内閣官房参与として原発事故対応や原子力行政への助言を続けてきた田坂氏は「『事故は収束に向かっている。すみやかに原発再稼働を』という根拠のない楽観的空気が今の最大のリスク」と警告する。


さらに「絶対に安全な原発ができたとしても、高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題が残る」と語った。特に①管理しなくてはならない10万年先まで、安全性の科学的な保証はできない②未来の世代に負担を先送りしなくてはならない──ことから「廃棄物をどうするかは技術的問題でなく、社会が受け入れるかの問題」との見方を示した。その上で「国民が納得するには、政府への信頼が絶対条件」として、福島原発事故で信頼を失った原子力行政の徹底改革を求めた。


4号炉の使用済み核燃料プールの冷却機能が喪失し、炉心がむき出しのまま溶融する「最悪シナリオ」となれば、首都圏の住民3000万人の避難が必要な事態が起こりうるとの試算を専門機関が3月末時点で政府に提出していたことも明らかにした。「起こりそうになったわけではない」としながらも「最悪の場合、国家機能が喪失しかねない現実を直視してほしい」と、政官財からの早期再稼働を求める声や浜岡原発停止要請への批判に反論した。


また、事故発生直後、原発周辺の放射性物質濃度を予測する「SPEEDI」の情報が住民避難に生かされなかったことを挙げ「(政府内で)情報を誰に伝え、どう判断、指示すべきかについてのマニュアルが整備されていなかった」と、危機管理の甘さを指摘した。


ゲスト / Guest

  • 田坂広志 / Hiroshi TASAKA

    日本 / Japan

    元内閣官房参与 多摩大学大学院教授

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

ページのTOPへ