2011年09月28日 18:00 〜 19:50 10階ホール
試写会「フェア・ゲーム」

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会見リポート

情報操作、メディアにとっても重大

水野 孝昭 (朝日新聞論説委員)

スパイと言えば、ダークスーツ姿の男というイメージが浮かぶ。ブロンドの美しい元大使夫人がCIAの工作員とは、想像を超えるだろう。


この小説まがいの実話をセミ・ドキュメンタリー風に描いたのが「フェア・ゲーム」だ。イラク戦争の開戦までのブッシュ政権内のしれつな暗闘がテーマである。CNNなどの映像も多用して、冒頭から緊迫感のある場面が続く。


米国がイラク戦争を始めたのは、フセイン政権が大量破壊兵器を開発しているからだった。その証拠は、イラクがアフリカから輸入したとされるアルミ管などだった。ところが、それは高官によって、ねじ曲げられた「情報」だった。主人公は真相を探るため、イラクの科学者の亡命を画策する。元大使だった主人公の夫も現地調査でイラクへの輸出はない、と確信する。


米軍の爆撃によって苦しむバグダッド市民の様子を描いているのは特筆できる。情報工作の犠牲者は無数にいたのだろう。


内部告発した元大使への復讐として、「黒幕」の補佐官は工作員の身元をリークすることで、この夫妻を社会的に抹殺しようとする。この政権ぐるみの圧力に対して、家庭崩壊まで追いつめられながら、二人が立ち向かって行くところがクライマックスだ。


「プレイム・ゲート」と呼ばれるこの事件は、情報機関やメディアがからんでおり、構図がとても複雑だ。ウォーターゲートにも並ぶ権力犯罪だったが、日本では十分に報道されなかった印象を受ける。この映画を見れば、その重大性を理解できるだろう。メディアにとって、情報操作やリークは他人事ではないはずだ。


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  • 試写会「フェア・ゲーム」 / Fair Game

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