2011年09月29日 12:30 〜 14:00 10階ホール
カーリー AP通信社長兼CEO 昼食会

会見メモ

訪日したトム・カーリーAP通信社社長・CEOが昼食会で「オンライン世界下におけるニュースの将来」について話し、質問に答えた。

カーリー氏はインターネットとニュースについて「many to oneの時代であり、ユーザーによるカスタム化がこれからのキーワードだ。ほしいものをいろいろなソースから集め、自分でアグリゲートできる。そういうものにはプレミアムを払うだろう」と「カスタム化」の中で有料のニュースコンテンツを提供するモデル構築を提唱した。

冒頭のスピーチでは「デジタル革命とニュース」の関係について、減収といったマイナス面と同時に、新たな視聴者層が登場し幅広い選択肢が用意できるとプラス面を指摘した。APが進める事業として、平壌支局に常駐記者を置き北朝鮮から初めてHD映像の発信、モバイル・アドバタイジング、ニュースライセンシング・グループなどを説明した。また、質問への答えの中で、「インターネット上でニューズを無料で提供するという間違いを最初におかした」「ニュースにカネを払うメンタリティを持たなければならない」「ネット上でのニュースへの課金は20ぐらいのモデルがあり、さまざまな組み合わせを試すことができる」「データをだれが消費するのか追跡し、コンテンツの行き先を知るべきだ」「iPadなどタブレット端末はあたりまえのデバイスになった」「日本の地震の時のように、人々は正確な情報を求めており、ニュースコンテンツのマーケットは大きくなっている」「一刻も早くニュースを出すことが大事だ。これまでは時間がかかりすぎた」などと語った。


司会 日本記者クラブ理事 星野誠(TBSテレビ)

代表質問 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)

使用した資料

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/09/JNPC-Address9-29_ppt-slide.pdf

AP通信のウェブサイト

http://www.ap.org/


会見リポート

メディア激変は「チャンス」

平 和博 (朝日新聞編集委員)

米国のメディア界は激変の中にある。「米国はデジタルメディアの衝撃の爆心地」というカーリー社長の表現も誇張でないことは、いくつかの数字を見るだけで明らかだ。


国際電気通信連合(ITU)の調査では、世界のネット人口は昨年、20億人を超した。そして利用者8億人を超すフェイスブック、さらにアップル、グーグル、ツイッターといったシリコンバレー企業のメディア空間での存在感。


一方、米国新聞協会のデータでは、日刊紙発行部数は07~09年だけで500万部減。米新聞社のリストラ情報サイト「ペーパーカッツ」によれば、09年1年間で143の新聞社が紙の新聞発行を停止した。


「メディアは変わらなければならない」とカーリー氏は言う。ネット黎明期、コンテンツを無料開放したことは誤りだったが、今や有料か無料かという議論にとどまっているわけにはいかない、と。


「イノベーションを追求し、様々なビジネスモデルを実験していかなければ」。キーワードはモバイルとソーシャルメディアだ。


スマートフォンやタブレットなど、新たなニュースの配信先としてのモバイル端末の広がりを、メディア企業の「チャンス」と見る。


そしてソーシャル。「1つのメディアが多くの人々に発信する“放送モデル”は終わった。これからは“多数から1人へ”。多くのメディアのコンテンツを、個人がどんどんパーソナル化し、友達と共有する」


そこで受け入れられるコンテンツとは? スピード。そして、ソーシャル空間を流通しやすいコンパクトさ。「もう1サイズですべてを網羅することはできない」


モバイル、ソーシャル時代の新しいニュースコンテンツ。それは、まさに日本のメディアが考えなければならない課題でもある。


ゲスト / Guest

  • トム・カーリー / Tom Curley

    AP通信社長兼CEO / President and CEO, The Associated Press

ページのTOPへ