会見リポート
2011年09月07日
14:00 〜 15:30
10階ホール
研究会「世界経済および貿易・投資動向」 林康夫 ジェトロ理事長
会見メモ
研究会「世界経済および貿易・投資動向」
司会 日本記者クラブ企画委員 萬 直樹(テレビ東京)
使用した資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2011/09/dd3823230dff89a69790664af1ade404.pdf
日本貿易振興機構(ジェトロ)
会見リポート
外で稼ぎ、内で稼いでもらおう
原 真人 (朝日新聞編集委員)
戦後の日本経済の奇跡を演出したのは間違いなく輸出産業だ。だが、その後の日米貿易摩擦や構造改革論議のなかで、輸出振興よりむしろ内需主導の方に光が当てられた時期もあったし、いややはり輸出こそ日本の生命線だという揺り戻しもあった。昨今の議論の的は、日本企業の海外進出に拍車がかかっていることの評価だ。雇用を失わせる空洞化だから忌避すべきなのか、それとも日本企業の進化の一過程ととらえて前向き評価したらいいのか。
通産省出身で日本の貿易界の顔である林氏が、そういう2項対立を超えた提言をしたところが興味深い。林氏は次の三つとも大事だという。
①外から稼ぐ(輸出)
②外で稼ぐ(対外直接投資)
③外の企業に内で稼いでもらう(対内直接投資)
「それぞれが力強く進まないと国の繁栄はない」。当たり前と言えば当たり前だ。だがそれが円高や法人税、FTAなどの政策論議となると、どれも大事だという話にはならず、往々にして「国内輸出産業を守れ」の大合唱に流れやすい。
林氏は「小さな国々にとって外で稼ぐことは輸出以上に大事なこと。なのに日本にはそれが欠落している」と指摘する。企業の海外進出も外資の日本進出も大いに結構という立場だ。そんな視点でみれば、1ドル=76円という歴史的な円高だって「日本企業が外で稼ぐ可能性が出てくるのだから、悪いことばかりではない」となる。
日本が「失われた20年」に陥った要因は、そういう複眼的な政策論議がなかったことも影響している、というのが林氏の問題提起だ。
もう一つあった。「政府が信頼されていないと物事は進められない」。増税もTPPも推進できない政権への辛辣なメッセージだった。
ゲスト / Guest
-
林康夫 / Yasuo HAYASHI
日本 / Japan
ジェトロ理事長 / Chairman, Japan External Trade Organization (JETRO)
研究テーマ:世界経済および貿易・投資動向