2011年08月19日 14:00 〜 15:30 宴会場(9階)
シリーズ企画「3.11大震災」 林敏彦 同志社大学教授

会見メモ

司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


『大災害の経済学』PHP新書 (PHP出版のページ)

http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-79874-5


林敏彦教授のホームページ

http://hayashiland.com/home/


会見リポート

復興は新しい歴史のスタート

本谷 夏樹 (毎日新聞月刊「毎日フォーラム」編集長)

1995年の阪神・淡路大震災を神戸市内の自宅で経験した経済学者の林敏彦さんは、兵庫県の復興政策に長く携わり「復興とは何か」が大きな研究テーマになった。被害規模が阪神・淡路を大きく上回り様相も異なる東日本大震災の復旧・復興について「既存の枠組みにとらわれない抜本的な法律の制定など後世に残る取り組みが必要だ」と力説した。


林さんは、内閣府が示した東日本の直接経済被害額16・9兆円(原発事故被害を除く)について「住宅被害が、警察庁は戸数なのに国土交通省や県は棟数で発表している。一般的に1棟=3戸に当たる」と統計のあいまいさを指摘。東日本の被害額は「32兆円」との独自の推定を示し「今後内閣府の推計も大きく変わる可能性がある」との見通しを示した。


さらに政府の「まず復旧してから復興」との方針を「初期条件が変わってしまったのだから本来は復興しかあり得ない」と批判。現行は、公共土木と農林水産業の施設復旧の国庫負担に関する二つの法律があるだけでいずれも「原形復旧」が原則。「復興」に関する法的定義や行政的な枠組みはないという。


林さんは「コンクリートの施設を復旧するだけで何の意味があるのか。亡くなった人が生き返るなら『復旧』と言えるかもしれない。しかし、人口は減り、ビジネスチャンスが失われ、市場も壊れてしまう」という大災害の現実を踏まえ、「復興とは新しい歴史を作ることでエンドレスの取り組みだ。それが阪神・淡路以降の私の16年間の帰結だ」と語った。


また大災害後に国民が一丸となる一定期間を「災害ユートピア」とし、「当面の復興事業が終了した後に備えた構造改革が必要」と話した。「このタイミングに復興増税に向けて国民を説得するのが政治の高度な仕事だが、最も遅れているのがその政治だ」と苦言を呈した。



ゲスト / Guest

  • 林敏彦 / Toshihiko HAYASHI

    日本 / Japan

    同志社大学教授 / Professor, Doshisha University

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

ページのTOPへ