2011年07月06日 15:00 〜 16:30 10階ホール
ケネス・ロス ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表

会見メモ

世界最大の国際人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチの最高責任者であるケネス・ロス代表が記者会見し、中東やアジアの人権侵害状況について見解を述べた。


ロス氏はエジプト、バーレーン、イエメン、リビア、シリア、中国、スリランカ、ビルマ各国の状況について説明し、中国の人権侵害について「国際社会の反応はがっかりするほど弱い」と指摘した。北朝鮮の人権状況は「世界で最悪のひとつ」と述べた。米軍によるオサマ・ビンラディン殺害に関する質問には「逮捕され法の裁きを受けるほうがよかった。米政府の説明によれば、(殺害した)米軍特殊部隊は自分たちの命が脅かされていると信じる理由があった、とされている。殺害の合法性についてヒューマン・ライツ・ウォッチは異議を唱えなかった」と答えた。

さらに日本政府の外交に関連して、「岡田克也元外相が人権を外交の要素としてとりあげたことは喜ばしい。しかし、その後の前原前外相、松本外相は人権について同じような関心を示していない」と失望感を見せた。特に、スリランカにおける内戦中の戦時国際法違反を調査する国連の委員会設置や、ビルマにおける国際法違反の国連調査委員会設置を日本が支援するよう求めた。

また、オバマ米大統領の対中人権外交について、「就任直後のオバマ大統領は中国の人権問題について弱腰だった。だが、2011年2月の胡錦濤主席訪米では違う態度をとり、人権について強い姿勢をみせた。それでも米中関係は壊れず、貿易と投資は続いた。中国政府はむしろ、オバマ大統領へ尊敬の念を持っただろう。オバマ大統領が学んだことをほかの政府も学んでほしい」と述べた。


司会 日本記者クラブ企画委員 高畑昭男(産経新聞)

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)


ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京オフィスのホームページ

http://www.hrw.org/ja/home



会見リポート

「アラブの春」の抑圧監視を

平岩貴比古 (時事通信外信部)

チュニジアやエジプトの独裁政権崩壊に触発された中東・北アフリカの民主化要求デモ。一連の動きは「アラブの春」とも呼ばれ、歴史的な転機となったが、同時に当局の弾圧で多くの血が流れた。この中で人権侵害に目を光らせるのが、国際人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)。冷戦時代に共産圏の人権問題を監視した「ヘルシンキ・ウオッチ」が源流だ。


来日したケネス・ロス代表(米国出身)は記者会見で、今回の中東民主化に関し、デモ参加者への武力行使や拘束、拷問を辞さない体制側を強く批判する一方、人権侵害への関心が弱いケースもあると、欧米諸国の姿勢を問題視している。


ハーグの国際刑事裁判所(ICC)は先に、リビアの民衆蜂起をめぐる弾圧で人道に対する罪を犯したとして、最高指導者カダフィ大佐ら3人の逮捕状を発付したばかり。「大量殺害は必ず司法の裁きを受ける」。ロス氏はICCの判断を支持し、抑圧的な政治体制に対する「重大な警告になる」と歓迎した。


ただ、空爆作戦が行われたリビアとは異なり、バーレーンに関して欧米諸国は関与を避ける。これには「圧力をかけるのをためらっている」と不満を隠さない。イランに近いイスラム教シーア派がデモを主導したこと、バーレーンに米海軍基地が所在することを理由に挙げた。


6月にエジプトを訪問し、暫定統治を担う軍最高評議会と人権団体として初めて面会。その影響力はオバマ米大統領も認めるところで、先のワシントンでの米中首脳会談に際しては、胡錦濤国家主席と同じ夕食会に招待された。中国の人権問題に断固たる態度を取っても外交関係は決して壊れないと強調、「オバマと同様、他のリーダーも学んでほしい」と訴えた。



ゲスト / Guest

  • ケネス・ロス / Kenneth Roth

    ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表 / Executive Director, Human Rights Watch

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