2011年07月11日 18:00 〜 19:40 10階ホール
試写会「おじいさんと草原の小学校」

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会見リポート

ケニアの昨日、今日、明日

菊池 哲郎 (毎日新聞特別顧問)

ケニア独立運動の闘士、マウマウ団の生き残りマルゲも今や84歳の爺さんだ。彼は小学校に入学すると言い出す。爺さんの来るところじゃないと追い払われる。小学校長ジェーンは孫ほどの年だ。この見知らぬ爺さんが気になって仕方がない。曾孫ほどの制服を着た小学生たち。彼らを取り巻く大人たちの騒動。これらがある日突然、新聞報道で脚光を浴び、世界を動かしてしまう実話物語だ。マルゲは最年長の小学生としてギネスに載っている。


ケニア政府は子供たちの教育に国の将来を託す。その小学校に「わしはとにかく字が読みたい」と場違いな老人が入ってきた。ジェーンはこれを両立させるべく一人戦いを始める。小学生たちと交流するマルゲの心の中にはゲリラ戦を戦ったマウマウ団への激烈なイギリスの弾圧拷問殺戮が生々しく残っている。マルゲがなぜ鉛筆の先を削れないかだれも知らない。そこには怖い過去があった。


そうした逸話を通して国の将来と過去の歴史とそれを結び付ける現在の葛藤が融合されていく。信念を持って戦うマルゲとジェーンを見つめ続けた小学生たちはいつの間にか何が正しいかを見抜く力をつけていく。


マルゲは何故に自分で文字を読みたかったのか。そこにイギリスが強制した悲しいケニアの歴史があった。


これはイギリス映画だ。自ら植民地に残した禍根をこういう形で世界に示し、歴史を何度でも捉えなおしていく。その隠さないで上手に真実に直面し、商売にする根性をまた見てしまった。しかも作品を見た後、心には涙とさわやかさが残る。画一化しないジャーナリズムの原点がそこにあるような気がする。それだけに少々題名が不満だ。牧歌的な話ではない。


ゲスト / Guest

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