2011年07月04日 15:00 〜 16:00 10階ホール
マレー・マクレーン豪大使を囲む会

会見メモ

マクレーン大使は、歴代豪大使の中で最長の6年8ヶ月にわたり大使を務めた。今月末の離任前に、この期間の日豪関係の進展を安保協力、経済・貿易面などから説明した。

安全保障分野では、05年イラク南部で活動する日本の陸上自衛隊の警備に豪州軍が協力して以来、緊密化した。それが、「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を生み、2国間の外務・防衛閣僚協議につながっていった。日本が米国以外で外務・防衛担当閣僚との定期協議を行っているのは、豪州だけである。東日本大震災では、3機の豪空軍C17が日本に派遣され、福島原発の冷却用の放水装置の輸送も行った、と。

豪州にとって、日本は70年代から最大の貿易パートナーである。それが近年中国に代わったからといって、補完性の強い両国の貿易関係に変わりはない。対豪直接投資では、昨年末までの日本からの累積額は494億ドルにのぼり、中国の4倍の規模になっている、と。2国間のFTA交渉は07年にスタートした。農産物問題で予断を許さないが、早期締結が経済関係をより深化させ、日本のTPPへの参加につながることになるのでは、とも。


司会 日本記者クラブ企画委員 高畑昭男(産経新聞)


駐日オーストラリア大使館

http://www.australia.or.jp/


スピーチテキスト(オーストラリア大使館HP)

http://www.australia.or.jp/speeches/dfat_20110704.php


会見リポート

多国間連携で地域共栄を

黒崎正也 (共同通信外信部)

6年8カ月にわたる在任中、47都道府県の全てを訪れたというオーストラリアのマクレーン駐日大使。これほど日本各地に足を運んだ駐日大使は過去にいただろうか。離日を前に臨んだ会見では、安全保障や経済協力、人的交流などの観点から両国を取り巻く状況を語った。


安全保障面で焦点となったのは、台頭する中国との関係だ。軍事・経済両面で急速に存在感を増す中国に対するアジア・太平洋地域各国の懸念を背景に、地域の安定化に向け「中国を建設的に関与させる手段」が必要だと指摘。東アジアサミットやアジア太平洋経済協力会議(APEC)など多国間の枠組みをさらに発展させ、経済分野だけでなく安全保障分野でも緊密な関係を構築、地域の共栄を目指す重要性に言及した。


オーストラリアにとっては今や、中国が最大の貿易相手国。一方で大使は、日本からオーストラリアへの直接投資額は昨年末時点で、中国からの4倍近くに上っていると説明した。中国の経済発展は地域の国々にとっても「大きな成長機会」だと述べ、「今後も日本とオーストラリアの2国間関係の発展に疑問の余地はない」。中国脅威論が喧伝され自信を失いつつある日本へのエールに聞こえた。


観光や教育分野のみならず、災害時の相互支援など両国の人的交流のすそ野は広い。東日本大震災後、外国首脳として初めて被災地・宮城県南三陸町を訪れたのはオーストラリアのギラード首相だった。これについて大使は「オーストラリア国民の日本に対する思いの象徴であり、誇りに思う」と振り返った。


大使在任中に交代した日本の首相は計6人。日本の政治状況については多くを語らなかったが、日本を“知り尽くした”その目にはどのように映っていたのだろうか。


ゲスト / Guest

  • マレー・マクレーン / Murray McLean

    オーストラリア / Australia

    駐日大使 / Ambassador to Japan

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