会見リポート
2011年06月15日
13:15 〜 14:15
宴会場(9階)
シリーズ企画「3.11大震災」東日本大震災と救急医療 節電下での熱中症対策 太田祥一 東京医科大学教授 日本救急医学会広報委員会委員長 三宅康史 昭和大学准教授 同学会熱中症に関する委員会委員長 日本
会見メモ
2人の医師がシリーズ企画「3.11大震災」で節電状況下での熱中症対策について、昨年夏の熱中症症例の検証結果を基に、以下のように説明した。
熱中症は高温多湿の環境でおこる。予防がなによりも大切である。ただし、熱中症弱者というべきもともと疾患がある高齢者と屋外で仕事やスポーツをする人と分けて対策を考える必要がある。
高齢者はエアコンが特効薬。節電下でも、気温28度、湿度70%以上になったら、がまんせずにエアコンをつける。扇風機を併用することで効果が増す。熱中症の死亡要因は循環器系が多く、心臓に負担をあたえないようにすることが重要である。
屋外で活動や労働をする人は、水分や塩分を補給し、身体を冷やす。最近はスポーツドリンクより、糖分が低く、塩分濃度が高い経口補水液がドラッグストアで販売されているので、それを利用するのもよい。一番よいのは、冷たい水とクエン酸も入っている梅干しをとることである。
司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)
日本救急医学会のホームページ
会見リポート
熱中症 特効薬はエアコン
田村 良彦 (読売新聞医療情報部次長)
猛暑だった2010年夏。熱中症で救急搬送された患者数もうなぎ上りだった。ところが、そこへ持ってきて今年は“節電の夏”である。
日本救急医学会の「熱中症に関する委員会」は06年から1年おきに、全国の救命救急センターなどを対象に調査を実施。昨年は94施設から1780例の症例が集まった。
それによると、熱中症による死亡例の多くは、入院して4~6日以内で亡くなる。「熱中症はまず予防」「熱中症の特効薬はエアコン」と太田氏(右)、三宅氏が強調するのも、重い熱中症患者の救命がいかに厳しいか、データからも明らかだからだ。
調査では、高齢者ほど重症の割合が高く、エアコンが設置されていないだけでなく、エアコンがあっても使わない人が多いことが重症化を招く要因であることがわかった。「高齢者は気温の変化に対する感覚が鈍っていることも一因ではないか」と三宅氏は推測する。
節電対策として国が打ち出した室内温度28度と、湿度なら60~70%以下は、熱中症対策の観点からは譲れない線という。「特に高齢者は体感に頼るのではなく、室内に温度と湿度計を置き、目で見てわかるようにしたい」と呼びかける。
扇風機は単独では限界があり、エアコンと組み合わせるのが良い。冷たい水を飲んで体を中から冷やすのも効果的。激しいスポーツなどで塩分も多く失う場合は、薬局で取り扱う経口補水液がよい……など実用情報も盛りだくさんの内容だった。
最後に「高齢者や持病のある人、住居環境の貧しい生活弱者が、熱中症弱者である」との三宅氏の指摘は、重い課題として心に響いた。
ゲスト / Guest
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太田祥一 東京医科大学教授 日本救急医学会広報委員会委員長 三宅康史 昭和大学准教授 同学会熱中症に関する委員会委員長
日本 / Japan
研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」 節電下での熱中症対策