2011年06月15日 15:00 〜 16:00 宴会場(9階)
インドソフトウェア・サービス協会(NASSCOM)ソム・ミッタル会長 記者会見

会見メモ

インド・ソフトウェア・サービス協会のソーム・ミッタル会長が、インドのIT産業の現状について語り質問に答えた。

インドと日本の産業構造は補完性が高く、連携・協力していくことが互いのメリットになると、説く。たとえば、日本の得意とするインフラ整備は、まさにインドが必要としているものであり、飛行場、地下鉄、高速道路、高速鉄道と、多々ある。日本のハイテク家電製品も、人口12億のうち、2億から3億人のインドの中産階級にとって魅力がある。日系企業のインドへの進出は、2007年の362社から2010年には725社と、倍増し、良い傾向がでてきている、と。

インドは日本の少子高齢化による、労働人口、特に技術者の不足分を埋めることができる。今年だけで、約65万人の理科系大学や専門校の卒業生がいる。ソフトの質・技術力の高さは、フォーチュン500のうち8割がインド企業と取引があることからも明白である。ことし日印包括的経済連携協定(CEPA)が締結されたこともあり、2国間の貿易額が現在の150億米ドルから2015年には250億米ドルになることを、期待している、とも。


司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


NASSCOMのホームページ

http://www.nasscom.in/



会見リポート

「MIT」より「IIT」

奥田 宏二 (日経ヴェリタス編集部)

訪日回数50回を超える知日派。ミッタル会長はインドと日本経済には補完性があり、連携が有効だと持論を展開した。補完できる分野を3つ挙げた。


1つ目は「インフラ」だ。インドでは日本も協力するデリー・ムンバイ産業大動脈構想(DMIC)など大規模プロジェクトが目白押し。ミッタル会長は「地下鉄に空港、鉄道網…。日本が得意な分野ばかりだ」と持ち上げた。インフラの未整備は長くインド経済のアキレスけんと言われており、技術力のある日本への期待は大きい。


2つ目が「消費」だ。ミッタル会長は「インドは初めて物を買う人々であふれている」と表現した。インド応用経済研究所によると、2009年度の年間所得が9万ルピー(約16万円)を下回る貧困層は1億世帯を超える。ただ、年間所得20万~100万ルピー(37万~183万円)の中間層は2844万世帯と05年比で約7割増えた。中間層へと仲間入りする人々は今後も増えることが見込まれ、人口減少で内需の縮小が予想される日本とは対照的だ。


最後は「人材」。ミッタル会長は「インドのエンジニアの平均年齢は27歳。若くすぐに新しい技術を吸収する」と胸を張った。ただ、日本企業の活用度が低いと会見のなかで唯一不満を表明した。


「これからはMIT(マサチューセッツ工科大学)じゃなく、IIT(インド工科大学)だよ」。数年前、米国に留学した友人から冗談交じりにこんな話を聞かされたことがある。IITは技術系高等教育を重視した初代首相ジャワハルラル・ネールが開設したインドの難関大学だ。昨年の入試では競争倍率が60倍近く。優秀な卒業生は外資系のIT(情報技術)企業が数千万円の年俸で入社を持ちかける例もあるという。「MITよりIIT」は必ずしも冗談とは言えなくなっているなか、いかに活用するかが日本企業にとって課題となりそうだ。


ゲスト / Guest

  • ソム・ミッタル / Som Mittal

    インド / India

    インドソフトウェア・サービス協会(NASSCOM) / President, National Association of Software and Services Companies (NASSCOM)

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