2011年06月02日 10:00 〜 11:00 10階ホール
ダニエル・イノウエ米上院議員 記者会見

会見メモ

訪日したイノウエ上院議員が記者会見し、日米同盟の重要性について話し、質問に答えた。

≪2006年5月の日米合意は5年後も実現できていないが、米国側から批判したことはないし、合意案変更のレター(レビン上院軍事委員長らが発表)が1本出ただけだ。ただ、堪忍袋の緒が切れることもある≫

日本の不安定な政治が日米関係に影響しているかと聞かれ、イノウエ上院議員は「米国の議会も下院で共和党が過半数を占めるねじれ状態で、ワシントンの政治は混乱し、法案の議会通過が遅れている。日本で起こっていることも民主主義国ゆえなのかもしれない」と述べた。

イノウエ氏は、中国が空母建造など軍備増強を進めていることを指摘し、アジアが「敵対心から卒業し平和的な未来の枠組みを作る」よう求めた。日米同盟について在日米軍基地が「強い抑止力を果たしている」と述べ、在日米軍撤退により、地域で軍備競争が始まれば地域が不安定となりアジア太平洋に壊滅的影響が及ぶと懸念を示した。沖縄の基地負担問題では、「戦略的に沖縄は中国に近い。北海道に基地を置くのは賢くない」と説明。2006年の日米合意実施について、「日米双方が問題を抱えている。6月に予定される2+2協議で妥協案が話し合われ、両国が受け入れられる案が浮上するよう願っている」と述べた。

司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)

イノウエ上院議員のホームページ

http://inouye.senate.gov/Home/Home_1.cfm


会見リポート

普天間現行計画を支持

与那嶺明彦 (琉球新報東京支社報道部長)

米民主党の重鎮で、連邦予算の決定にも強い影響力を持つ知日派の上院歳出委員長。日本滞在中は被災地を訪問し、菅直人首相や閣僚と相次いで会談した。記者会見が内閣不信任決議案の採決日と重なり、日本政治への発言が注目されたが、米国の「ねじれ議会」にも触れて「民主主義ゆえの特徴だ」と論評を避けた。


米軍普天間飛行場の移設問題では、民主、共和両党の有力議員が財政負担や政治状況の変化を挙げ、5月に名護市辺野古への現行の移設計画は「非現実的」として嘉手納基地統合案などの検討を提言していた。だが来日前にクリントン国務長官、ゲーツ国防長官と会談したイノウエ氏は、今回の訪日で北沢俊美防衛相らに「米政府の立場に変わりがない」と伝え、沖縄県内での現行移設案にこだわる日本側を安心させた。


会見でも現行計画を支持する立場をあらためて表明。だが2006年の米軍再編合意も移設や海兵隊のグアム移転が進んでいないことについて、日本の首相が1年ごとに交代することと関連づけ「米側の忍耐は永続するわけではない」とも発言した。現状が続けば見直し論が加速しかねないと示唆したとみられるが、現にその後パネッタ新国防長官が見直しに柔軟な姿勢を見せ、議会内でも広がっている。


沖縄県内での移設が進まない最大の理由である地元の根強い反対に関しては、戦後66年間も外国軍駐留を強いられる県民感情に理解を示す一方、「日米安全保障協議委員会や首脳間で解決されることを望む」と繰り返すにとどめた。「日米関係に精通」としばしば紹介されるだけに、踏み込んだ見解が聞きたかった。


中国の軍拡を懸念し、日米関係の基盤をなす在日米軍の有用性を強調したが、「米軍プレゼンス(存在)が縮小した場合の日本の再軍備」にも言及。「ビンの蓋」論に米国の警戒が依然強いこともうかがわせた。


ゲスト / Guest

  • ダニエル・イノウエ / Daniel Inouye

    アメリカ / USA

    上院議員 / Senator

ページのTOPへ