2011年05月31日 15:00 〜 16:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」キアフォット ミシガン大教授(原子力工学)

会見メモ

放射線測定や被ばく放射線量評価を専門とするキアフォット教授が福島第一原発事故について語り、放射線の安全性や測定、人体への影響について日本政府が各国の専門家を集め。独立した国際パネルをただちに発足させるよう求めた。


≪日本は米国や各国の原子力専門家に協力を求めるべきだ。プライドの問題があるかもしれないが、これほどの大事故が収束していない以上、変化がないと、プライドの問題は恥の問題になるかもしれない≫


キアフォット教授は、福島第一原発事故の教訓に基づき、日本の既存の原発の設計と運転をただちに改善すべきだ、と述べた。地震が想定外の大きさだったから事故は自然災害だ、という考え方は、原発設計思想にとって根本的な問題だ、と批判。福島第一のタイプの原発では最悪の事態は全電源喪失だと専門家が事前に指摘していたのに、なぜ、全電源喪失を考慮しないで設計された原発が存在するのか、と疑問を投げかけた。福島第一の安全性は、「とても愚かで想像力に欠けている」と表現した。また、福島県の学校で子どもの年間被ばく限度を20ミリシーベルトと高く設定したことは、「驚きであり、国際的な勧告を誤って解釈した」と述べた。校庭の汚染された土を掘り返し、穴に埋めることは、「長期的により深刻な環境被害につながる」と批判し、この土は容器に入れ、福島第一原発構内で保管するよう求めた。さらに原発労働者の放射線被ばく問題を最優先で取り組むよう訴えた。

教授は最後に、「日本人はもはや、政府を信頼せず、土地、食べ物、水が安全かどうかもわかっていない」と指摘。国際的な放射線測定や放射線安全性の専門家と地域代表によるパネルを日本政府が作り、日本中の土地、水、食べ物の放射線を早急に調べ、結果を自由に公表するよう提案した。


司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司 (テレビ朝日)


キアフォット教授のウェブサイト

http://www-personal.umich.edu/~kearfott/


会見リポート

やっぱりかなりヤバイ?

山田 道子 (サンデー毎日編集長)

やっぱりかなりヤバイんだ──キアフォット教授が一言一言明確に話すのを聞いて背筋が寒くなった。福島県の児童生徒の野外活動を制限する基準値、20㍉シーベルト。教授の会見があった日に発売した本誌では「福島の子どもは学童疎開だ」と呼びかけた。


「日本の原発を停止すべきなどについて意見はない」と冒頭念押しした教授だが、最重要事項として20㍉シーベルト基準をあげた。「とても驚愕している。国際放射線防護委員会の勧告を誤って解釈したのではないか。体内被曝は非可逆的なものだ」「年間許容量1㍉シーベルトが適切な制限値だと思う。被曝に関する線量は過小評価されているのではないか」と疑問を呈した。「その基準は幸いにも撤回され、正しい値を決める作業中と聞いている」とも話した。高木義明文科相は5月27日、「1㍉シーベルト以下を目指す」としたが、基準自体はそのままだ(6月1日現在)。低線量被曝については「がんが全て放射能に由来するとは言えない。はっきりいえる値はない」とのことだった。


なるほどと思ったのは、福島県の校庭の土の処分方法。除去した表土を他に埋めるのは環境により深刻な被害を与える可能性がある。土を福島第一原発の敷地内に貯蔵すれば、高濃度汚染された原発のがれきや土を遮へいする役割を果たすという。


もう一つ、教授が強く求めたのは、原発収束に向けて海外の専門家を交えた組織を作ることだった。


教授は「トモダチ」強化のため米政府に派遣されたのではなく、中国の原発視察の予定と重なり、乗り継ぎ地の東京に残ったという。原発事故をめぐって出てくる政府・東電関係者は男性ばかり、原子力ムラの面々もほとんど男性。原子力工学の専門家ということで教授も男性と思っていた自分を恥じた。


ゲスト / Guest

  • キアフォット / Kimberlee Kearfott

    アメリカ / USA

    ミシガン大教授(原子力工学) / Professor, University of Michigan

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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