2011年05月23日 11:00 〜 12:00 10階ホール
ケフィ・チュニジア外相 記者会見

会見メモ

ケフィ外相は、1月14日の革命以降、西側諸国との共通価値観をもつエリート・クラブに参加できるところまでチュニジアはきている、と語った。

「アラブの春」の起点となったが、50年にわたる独裁政権から民主化への道を歩み始めたばかりである。クラシック音楽にたとえれば、シューベルトの「未完成交響曲」を奏で始めたばかりで、「喜びの歌」を唱えるところまで民主化路線を定着させたい、とも。現在以下の4つのチャレンジがあり、その克服が最重要課題になっている、とした。

①政治体制の確立 7月24日実施予定の制憲議会選挙で、新憲法制定、大統領選挙、新政権への道筋をつけること。

②経済の立て直し 人口1千万人の国で毎年600から700万人の観光客があったが、政変後大きく落ち込んでいる。GDPの7%を占める観光業などをてこ入れする必要がある。

③失業対策 70万人の失業者がおり、毎月7千人の新たな失業者が生まれている。そこにリビアから帰国した4万人の出稼ぎ労働者の問題が加わってくる。

④国内の地域格差の解消 優遇されてきた海岸部に比べ内陸部は経済成長から置き去りにされてきた。今回の革命の発端になったデモは内陸部から起こった。国の予算の80%程度を重点的にそのような地域に向け、環境を整備し、成長をうながしたい。


司会 日本記者クラブ企画委員 会田弘継(共同通信)


在日チュニジア共和国大使館 - Embassy of the Republic of Tunisia

http://www.tunisia.or.jp/


会見リポート

ジャスミン革命は未完成

片山 哲也 (時事通信外信部)

チュニジアの長期独裁政権を崩壊させた民衆蜂起「ジャスミン革命」から間もなく5カ月。移行期の外交を担う同国暫定政府のケフィ外相が来日し、同国の民主主義定着に向けて日本を含む国際社会の支援を訴えた。


ジャスミン革命はエジプトやリビアなどアラブ各地に波及した民主化運動の先駆けとなり、ケフィ氏は記者会見で「民主主義、人権尊重、言論の自由といった価値観を共有できる国際社会のエリートクラブの一員となったことを誇りに思う」と語った。ただ、新生チュニジアの困難に満ちた国づくりは始まったばかり。同氏によれば「シューベルトの未完成交響曲をようやく演奏し始めた段階」にある。革命は完遂していないのだ。


目下の課題は4つ。第1は憲法の制定や新大統領の選出、本格政権樹立といった政治プロセスをいかに平和裏に進めるかだ。次に経済の回復。チュニジアは人口1000万人の国土に年間600~700万人の観光客が訪れる観光立国だが、革命に伴う政情不安で低迷している。3点目は高い失業率の改善。失業者は現在約70万人で、毎月新たに7000人が職を失っているという。開発の進んだ沿岸部と取り残された内陸部との格差解消も課題として指摘した。


経済的困難を増幅させているのが隣国リビアの内戦だ。同国で働いていた多くのチュニジア人が失業したほか、流入した約16万人のリビア人難民は帰国できず、住宅や食料などの提供でチュニジアが負担を強いられている。


チュニジアからは革命後、約2万人が職を求めて海を渡り、不法難民となって欧州に流れ込んだ。欧州側との摩擦を引き起こしたが、ケフィ氏は、チュニジアもまたリビアから多数の避難民を受け入れた点を指摘。アラブ世界で起きている歴史的な変革という文脈を忘れ、不法移民にのみ目くじらを立てる欧州側をやんわりと批判した。


ゲスト / Guest

  • モハメド・ムルディ・ケフィ / Mohamed Mouldi KEFI

    チュニジア / Tunisia

    外相 / Foreign Minister

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