2011年05月13日 12:00 〜 14:00 10階ホール
昼食会 五百旗頭真 復興構想会議議長 

会見メモ

復興構想会議の議長として東日本大震災の復興に関する議論をリードする五百旗頭真・防衛大校長が昼食会で話し、質問に答えた。


≪「われわれは生き残ったが、亡くなった人のためにがんばる。そういう気持ちが戦後の復興を支えた。今回もそうだ。津波で流されるこれまでの歴史を克服する。大震災の記録を残すことが鎮魂になる」≫


五百旗頭さんは、自身も被災した阪神大震災と東日本大震災を比較した上で、5月の連休に訪れた福島、宮城、岩手県の被災地の状況を語り、復興構想会議が決めた復興構想7原則についての質問などに答えた。

大震災1カ月後に防衛大校長として視察した被災地は「暗かった」印象だったが、5月の訪問では「復興のあゆみは極めて多様だ」と感じたという。国が家賃を払うことで民家を借りる被災者が増え、仮設住宅の建設戸数は当初見込みの6,7割程度に減り、海のがれき除去も始まるなど、4兆円の第一次補正予算の効果がすでに現れていることを指摘した。補正予算が超党派で成立したように、国難に与野党が超党派で対処するよう訴えた。福島原発事故の被災についても、「復興構想会議が最後まで大事に抱きかかえていく。日本人の心が失われていないことを示す」と述べた。

また第7原則の「国民全体の連帯と分かち合い」という表現について、復興財源の「将来への先送り、付け回しは災害がなかったとしても難しい。同世代で対処し、現在の世代で支えあうことだ。ベストミックス、すべての可能性を考える」と説明した。

司会 日本記者クラブ企画委員長 吉田慎一(朝日新聞)

代表質問 日本記者クラブ企画委員 倉重篤郎(毎日新聞)


復興構想会議のホームページ

http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/


復興構想7原則

http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kousou4/fukkoukousou7gensoku.pdf

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

逆境のりきる民族のDNA

倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞論説室専門編集委員)

よどみなく論理的に滔々と語り続ける名調子は、歴史絵巻物の解説でも聞いているような錯覚を起こしてしまいそうになる。


自らが体験した阪神大震災に始まり、その時に得た教訓、今回の大震災との比較、東北地方に視察に訪れた時の体験談とつないだが、今後の具体的対応策は、論議未消化の印象だ。


比較論で興味深かった数字は以下の通り。阪神大震災では自衛隊の瓦礫捜索ローラー作戦が奏功し、遺体確保で行方不明者は3体のみだった(東日本大震災では海中捜索がままならず不明者なお多数)。逆に、「東日本」では自衛隊の初動対応が早く生存救出が19260人(「阪神」は165人)だった。ボランティアの数は「阪神」の方が多く、被災者5・7人に1人だったのに対し「東日本」では17・7人に1人だった。


さて、復興構想会議が6月末にまとめる予定の提言である。いくつかのミニニュースを提供してくれた。まずは、多数の犠牲者を悼むためのメモリアルとして、処理に困っている瓦礫を使って砂丘を造成、その上に広葉樹を植えて防災林機能を持つ鎮魂の森を作る。また、焦点の復興財源については、増税や国債発行などを念頭に「ベストミックス」で対応する考えを強調した。


歴史学者としても一家言ある五百旗頭氏だ。応仁の乱や戦国時代を振り返り、「国中が血で血を洗う騒乱で乱れに乱れた。今の首相がバカかどうかという問題のレベルではなかった」とも述べた。菅直人首相の資質問題でがたつく現政界に対する痛烈な批判とも聞こえた。最後は、紀元663年の白村江の戦い、1945年の敗戦の二つのケースを持ち出し、逆境から立ち直る日本民族の歴史的DNAで今回も乗り切ろう、という五百旗頭史観でまとめた。


ゲスト / Guest

  • 五百旗頭真 / Makoto IOKIBE

    日本 / Japan

    復興構想会議議長 / Chairman, the Reconstruction Design Council

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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