2011年04月22日 16:30 〜 18:00 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」馬淵澄夫 首相補佐官

会見メモ

福島原発事故対策統合本部の中長期対策チームの政府側責任者を務める馬淵澄夫総理補佐官・衆議院議員が記者会見し統合本部の取り組みと課題について詳しく語った。


≪「政府と東電が作った原発事故対策統合本部は法定外の組織だ。原子力災害対策特別措置法は今回のような事態を想定していないし、民間事業者の東電の権限を制限する仕組みがない。政府が対応するため東電と統合本部を作った」≫


馬淵氏は震災から半月たった3月26日、総理補佐官の辞令を渡され、統合本部の仕事を始めた。原子力災害対策特別措置法にもとづき政府は震災当日、原子力緊急事態宣言を出し、原子力災害対策本部(原災本部)を作った。しかし、政府は原発サイト外について対応するだけで、原子炉事故そのものは事業者である東電が責任を持つ仕組みになっている。政府がサイト内に対応できるようにするため、法定外の組織として統合本部を作った。ただ、対策の検討チームであり、事業者の東電の作業に政府は助言する立場だという。

東電が4月17日に発表した事故対策の工程表(「道筋」)について、統合本部には相談はなく、統合本部の中長期対策チームは翌日の4月18日に設置された。「道筋を修正・変更し、統合本部がシナリオを提示する必要があるかもしれない」という。

放射線の封じ込め(コンテインメント)を将来的にどう行うかが最大の課題であり、①サイト内に地中壁を作り地下への広がりを遮断②高い放射線量でも作業が可能になるリモート無人施工③余震に備えた耐震補強④放射性物質の飛散防止のためにシートによる覆い⑤燃料棒の取り出し⑥長期冷却のシステム――などを検討していることを明らかにした。

「次から次へと新しい事態が起こる中、全体を俯瞰することは難しかった。目の前で起こることで手いっぱいだった。東電は正確を期するためあいまいな表現になりがちだ。いずれにしても、人類が初めて遭遇した事態であり、乗り越えていかなければならない」と述べた。


首相官邸ホームページの大震災対策のページ

http://www.kantei.go.jp/saigai/


馬淵澄夫衆議院議員のホームページ

http://www.mabuti.net/


会見リポート

中長期? 責任逃れの臭いも

河野 博子 (読売新聞編集委員)

「原発事故に対し、政府は、いったいどういった組織で対応しているのか、と多くの方から質問を受けた」


馬淵氏がこう述べたように、多くの人の頭の中は、!?だらけに違いない。日本記者クラブからの会見の案内文は、「福島原子力発電所事故対策統合本部で、放射線遮へい・放射性物質放出低減対策チームの共同リーダーを務める」と馬淵さんを紹介していたが、そういう基本的なことすら、わかりづらかった。


会見を聞いて、不安は募った。


確かに、現行制度では、原子力発電所の事故には、一義的に電力会社が責任を持って対処する。しかし、福島第一原発では、東京電力では対応しきれない危機的事態が続く。国が責任を持って、日本中の総力を結集して対処することが求められるが、そうなっていない、と感じたのだ。


原子力災害に対する特別措置法に基づく原子力災害対策本部(原災本部)は、本部長を首相が務め、全閣僚が本部員。東電と原災本部で対応しきれない事態になったため、統合本部が作られた。


統合本部について、馬淵さんは、法律に基づく組織ではなく、「官邸が東電と立ち上げた任意の組織」「決定権があるわけではなく、検討をし、それを総理あるいは大臣にあげている」という。そして、こうした危機的状況下でも、国が東電に代わって事態対処に乗り出す仕組みはない、と強調した。「責任逃れではなく、東電・民間事業者の権限を制限するような仕組みになっていない」


統合本部は4月18日に改組され、馬淵さんが共同リーダーだったチームは、中長期対策チームと名前を変えた。核燃料の冷却安定にもまだメドがたっていないのに、「中長期対策」「復興」が強調される。責任逃れの臭いを嗅ぎ取ってしまうのは、私の感覚がおかしいのだろうか。


ゲスト / Guest

  • 馬淵澄夫 / Sumio MABUCHI

    日本 / Japan

    首相補佐官 / Special Advisor to the Prime Minister

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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