2011年04月22日 12:20 〜 13:30 宴会場(9階)
昼食会 WSJ トムソン編集局長

会見メモ

欧米の報道機関は財政的な問題もあり、日本に支局を置き、継続的に取材をしているところが減っている。

日本は取材対象として現在も重要な国であり、悲劇が襲ったからすぐに記者を派遣するといった態勢は間違っている。


WSJは、震災報道を包括的に行った。日本国内からも関連ニュースを求める人が多かったこともあり、日本版も含めた3月のページ・パービューは約400万に達した。


東電福島第一原子力発電所の事故での日本政府と東電の対応については、正確な情報を迅速に出すことが何よりも求められている。

国際問題ということも充分理解されていると思うが、国外に住む人に日本のスシを食べても大丈夫と思うようになってもらわなくてはいけない。

東電は事故データを整理し、公表することで、こんごの世界の原子力政策への判断材料を与えることになる。


デジタル化の進展により二つの種類のニュースが価値を持つようになった。

一つは速報。単独会見で自分たちだけが得た情報を発信する。ただし、これは時間が経てば、ニュースの稀少価値は薄れる。

このような報道の場合は、往々にして発言者の発言をそのまま報じることになる。

二つ目の価値とは、このような発言の意図や背景を明らかにすることだ。ジャーナリストの役割として、読者をミスリードしないように、広い文脈の中でニュースを解説し、分析することが重要になる。


司会:日本記者クラブ企画委員 会田弘継(共同通信社)


ウォールストリート・ジャーナルのホームページ

http://asia.wsj.com/home-page


会見リポート

「内向き」にならないで

依光 隆明 (朝日新聞特別報道センター長)

奔流のような震災報道に、ほんの少し違和感を感じ始めていた。確かに量は多い。が、書かれるべきことが書かれているのだろうか、と。


その答えをトムソン氏が出してくれるのではないか、実はそんな期待をしていた。テーマはずばり「アメリカから見た日本の震災報道」。今回の報道を客観的に評価するには知日家のトムソン氏は最適に思えたのだが…。


期待は肩すかしに終わった。おそらくトムソン氏は被災国に対する心情を前面に出したのだろう。まず「我々の心は皆様方とともにあります」とエールを送り、日本の報道についても、以下の表現で気恥ずかしくなるほど高い評価をしてくれた。


「状況が難しいにもかかわらず、プロの仕事をしている。ウエブ上にはいろいろな意見や噂が入り乱れていて、だからこそジャーナリストは大きな責任を負っている。『我々はプロだ』と証明できるような記事を書いてほしいのだが、私の印象としては、まさにそれを具現したのが日本のジャーナリストだ」


もちろん切れ味鋭い発言も多かった。ここ数年、外国の社が日本から特派員を引き揚げていることに対し、「ある社の記事は福島の現地取材と銘打っていたが、香港から出稿されていた」とちくり。「西側のメディアが日本への関心を失っていた。私に言わせると間違った選択だ。日本は常時重要な国だと思う」と続けた。


「憂慮する声もある」として日本への注文も述べた。世界に果たすべき役割を忘れるな、との趣旨だったように思う。「(震災を契機に)日本は内向きになるかもしれない。世界における日本の役割は仲介者であり、米中関係に手を貸せるのも日本だ。内向きになるとせっかくの建設的な役割に背を向けることになる」


いま思うと、これが氏の最も言いたかったことなのかもしれない。


ゲスト / Guest

  • ロバート・トムソン / Robert Thomson

    ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)編集局長 / Managing Editor of the Wall Street Journal(WSJ) and Editor-in-Chief of Dow Jones & Company

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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