2011年04月19日 14:00 〜 15:00 宴会場(9階)
シリーズ企画「3.11大震災」小野善康 内閣府経済社会総合研究所長

会見メモ

シリーズ企画「3.11大震災」で内閣府経済社会総合研究所の小野善康所長が、「災害復興制度の必要性」について語った。


≪「災害規模に応じて、税率と期間を限定した復興税をこの際、制度として作るべきだ。将来、万が一、災害が起こった場合、制度を使って対応できる」≫


小野氏は、大規模災害に備えるのは敵の攻撃に備える以上に重要な国防なのに制度ができていない、と指摘し、税のかたちをとった統一的義援金として復興税制度の導入を求めた。被災していない地域から集めた税金を国が管理し、被災地の復興に使えば、被災していない地域から被災地がモノを買うことになり、税金は戻ってくる仕組みだ、という。さらに、①消費税として課税すれば、国民全員で負担を分かち合うことになる。②被災地も消費税は負担するが、より多く戻ってくる。③被害総額に対応し、税率と期間を決め、期限が来れば打ち切る。④社会保障と税の一体改革論議とは切り離し、なし崩しで、増税を社会保障には回さない――などを説明した。

復興をめぐり「二つの社会像」があると指摘し、ひとつは「被害を受けた人が負う自己責任」であり、二つ目は「社会全体で分担して被害を背負う復興税と財政支出」と説明した。どこでいつ大災害が起こるかわからない日本では、社会全体で負担する仕組みが必要だと力説した。日本の生産余力が30兆円~40兆円あり、分担は雇用と所得創出につながると述べた。

政治情勢からみて復興税は可能か、との質問には「こういう状況になって、苦しんでいる人がいて、払いたい人がいて、与野党に税が必要だという人がいて、それなのにどうしてできないんだろう、と思う。そんなことをやっている場合でしょうか」と話した。


司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔 (朝日新聞)


内閣府経済社会総合研究所のホームページ

http://www.esri.go.jp/index.html


小野善康氏のホームページ

http://www.iser.osaka-u.ac.jp/~ono/index.html


会見リポート

復興税 首相ブレーンが後押し

小此木 潔 (朝日新聞編集委員)

経済学者として全く個人の立場で、と前置きしての会見だが、話を聞くと、菅直人首相の顔が浮かんで仕方なかった。


会見の前日、参院予算委員会の答弁で首相が「欲張りかもしれないが、復旧・復興と、財政再建の道筋をつけることも含めてやれたら、政治家として本望」と述べた。「復興の財源は消費税がいい」と言い切ったブレーンの言葉は、それに呼応するように響いた。


この復興財源は「税と社会保障の一体改革」とは切り離して考えるべきだと小野さんは強調した。「一体改革と偶然、つながるのはいいという議論はあっていいが、それが当たり前というのではいけない」


それでも、復興財源としての消費増税が、結果的に一体改革の入り口にもなりうる。そんなイメージを抱いた人も会場にはいたことだろう。またそれが、首相が抱くイメージとも重なるのではないか、といった印象もぬぐえないところだ。


日本がいつまた大震災に見舞われるかもしれないのだから、復興の制度と財源を「緊急時社会保障制度」としてあらかじめ決めておくべきだ。備えがあれば、危機対策はただちに発動できる。そう説いた小野さんの論理は明快だった。


当面は国債で資金を調達するとしても、国債信用を維持するために増税が必要で、「みんなで背負う」には消費税がふさわしいと指摘。「所得税は、お金持ちで払っていない人も少なくない」などと述べた。


今回の復興事業費総額を30~40兆円と推計し、そのうち15兆円を国費で負担すると想定。


試算例では、消費税の1・5%引き上げを5年間、あるいは3%アップを3年間続ければ必要な財源をまかなえるとした。所得税の増税による試算も排除せず、約20%の増税が3年間続くと説明した。


ゲスト / Guest

  • 小野善康 / Yoshiyasu ONO

    日本 / Japan

    内閣府経済社会総合研究所長 / Economic and Social Research Institute

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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